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2013 Fiscal Year Annual Research Report

プラズマ-壁相互作用解明に向けた分子シミュレーションのマクロスケールへの拡張

Research Project

Project/Area Number 11J00340
Research InstitutionNagoya University

Principal Investigator

斎藤 誠紀  名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)

Keywords二体衝突近似 / 分子動力学 / 多結晶グラファイト / プラズマ-材料相互作用 / タングステン / ヘリウム / 水素 / 照射損傷
Research Abstract

1. 多結晶グラファイトへの水素照射シミュレーション
前年度までの研究により、水素プラズマにさらされた単結晶グラファイト中での水素挙動を調べることに成功している. しかし, 現実のダイバータ板は多結晶構造を有する. そこで, 多結晶グラファイト構造を模擬した分子配置を有する標的材料を用意し、水素原子を打ち込む計算を、開発したハイブリッドシミュレーション手法を用いて行なった. その結果, 多結晶グラファイト中でも, 水素原子のエネルギーが運動エネルギーが200eV程度になるとチャネリングが引き起こされることを確認した. 標的材料がアモルファス炭素の場合と比較すると, 多結晶グラファイト中の水素原子は, チャネリングが生じることにより, より深い位置まで侵入することが分かった. また, 結晶粒径を変えたいくつかの標的材料を用意し, そこに水素原子を照射することで, 結晶粒径依存性も調べた. その結果, 結晶粒径が小さいほど, 多結晶グラファイト中の水素原子挙動は, アモルファス炭素中の水素原子挙動に近づくことが分かった. この原因は, 多結晶グラファイトの粒界では, 結晶構造が壊れアモルファス構造を有するためである, そのため, チャネリングによりグラフェン層間を移動してきた水素原子が粒界に到達すると大角散乱を起こし、デチャネリングするためである。ゆえに、結晶粒径が小さく粒界に頻繁に水素原子が遭遇する場合、その挙動はアモルファス炭素中の挙動に近づく。
2. タングステンへの希ガス照射シミュレーション
近年, ダイバータ材としてタングステン材料が注目されている. タングステンにヘリウムプラズマを照射すると, 材料温度が1,000K~2,000Kの範囲にあり, ヘリウムイオン入射エネルギーが20eV~100eV程度であるとき, fuzzとよばれるナノメートルオーダーの直径をもつフィラメント上の構造が形成されることが報告されている, しかし, 同じ希ガスであってもアルゴンやネオンなどヘリウム以外の希ガスプラズマにおいてはfuzz形成に成功しなかったとの実験報告がある. そこで, 二体衝突近似シミュレーションを用いて, 希ガスをタングステンに打ち込むシミュレーションを行い, その侵入長を評価することで, fuzz構造形成の可能性について調べた. その結果, ヘリウムは, スパッタリング聞値よりも低い入射エネルギーでも十分奥深く(数格子分以上)まで侵入できることが分かった. 一方, ネオン, アルゴンの場合, 数十Åより深い位置に入射原子が到達するためには, スパッタリング閾値よりも高い入射エネルギーが必要になることが分かった. スパッタリングが生じる場合, 仮にナノ構造が形成されても, すぐに削られてなくなってしまうことが予想される。そのため, ヘリウムはfuzz構造の形成にいたりやすく、ネオン, アルゴンの場合にはfuzz構造が観察できないとの結論が得られた. 本研究では, さらに, チャネリングと衝突断面積の関係にも触れ, チャネリングが生じる閾値に関する予見も行なった.
物理学会にて, 学生優秀発表賞を受賞した.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成25年度の研究計画に従って, 二体衝突近似-分子動力学ハイブリッドシミュレーションコードを用いて, 多結晶グラファイトへの水素照射シミュレーションを行ない, 研究成果を得た. また, 二体衝突近似計算を用いてタングステンfuzz構造の形成可能性に関する示唆を得た.

Strategy for Future Research Activity

3年間の研究期間を通じて, 研究目標として掲げていた分子動力学-二体衝突近似ハイブリッドシミュレーションコードを開発することに成功した. また, この計算コードを用いて, グラフェン, グラファイト, 多結晶グラファイトの計算を行ない, 多結晶グラファイト中の水素原子挙動を, より小さな物理スケールから理解するための知見を得ることに成功した, ただし, 本研究で用いたハイブリッドシミュレーションは, 絶対零度下における計算となっている. 有限温度の材料の場合には, 原子の熱振動によるデチャネリングなどが引き起こされることが予想される. 原子の熱振動の効果も考慮した計算コードを開発することが今後の課題になる.

  • Research Products

    (3 results)

All 2013

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] Binary-Collision-Approximation-Based Simulation of Noble Gas Irradiation to Tungsten Materials2013

    • Author(s)
      S. Saito, A. M. Ito, A. Takayama and H. Nakamura
    • Journal Title

      J. Nucl. Mater.

      Volume: 438 Pages: S895-S898

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 二体衝突近似シミュレーションを用いた希ガスプラズマ照射下におけるタングステンfuzz形成の検討2013

    • Author(s)
      斎藤誠紀, 伊藤篤史, 高山有道, 中村浩章
    • Organizer
      日本物理学会秋季大会
    • Place of Presentation
      日本物理学会秋季大会
    • Year and Date
      2013-09-28
  • [Presentation] 水素プラズマ-炭素材相互作用の解明に向けたサプマイクロメートルスケール分子シミュレーション2013

    • Author(s)
      斎藤誠紀, 伊藤篤史, 高山有道, 中村浩章
    • Organizer
      日本物理学会秋季大会
    • Place of Presentation
      徳島大学
    • Year and Date
      2013-09-25

URL: 

Published: 2015-07-15  

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