2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J00444
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
須田 碧海 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 土壌 / 重金属 / Mn酸化物 / Fe酸化物 / 逐次抽出法 / 火山灰土壌 |
Research Abstract |
既存のMn酸化物中重金属の選択的抽出法の日本土壌への適用性について検討を行ない、日本に広く分布する火山灰土壌では、Mn酸化物の溶解性が非常に低く、適用不可能だった。この成果は、Geoderma.(第163巻,pp.291-295)として国際誌に掲載された。上記の研究により、火山灰土壌では、Fe酸化物の溶解性も低いこともわかり、(1)欧州で広く適用されるFe/Mn酸化物の溶解法(0.5M 酸性NH_2OH-HCI法)の日本土壌への適用性の検討(2)火山灰土壌でFe/Mn酸化物の溶解性が低い原因の解明を行った。(1)については、火山灰土壌であるアロフェン質黒ボク土では、非晶質Fe酸化物の溶解率が平均して10%にも満たないことを示した。よって、これらの土壌では、0.5M 酸性NH_2OH-HCl法の適用はできないと結論付けた。(2)では、非晶質のAl鉱物やAl-腐植複合体が酸化物表面を被覆し、還元剤と酸化物の反応を阻害しているということを示す結果を得た。(1)および(2)の成果は国際誌に投稿・審査中である。 上記の方法と同様に広く普及している0.04M NH_2OH-HCl in25%酢酸法の検討を試みた。その結果、本方法は結晶質Fe酸化物(非晶質Fe酸化物よりも難溶性)まで溶解する方法であるが、アロフェン質黒ボク土では、非晶質Fe酸化物さえ平均で30パーセント近くが溶解していないとわかった。そこで、実験条件の改良を行い、結晶質Fe酸化物も大部分を溶解し、酸化物中重金属の抽出量も大幅に改善される方法を開発した。 上記のように、研究の最終目的である「火山灰土壌にも適用可能な化学形態別逐次抽出法の開発」に向けて、進展があった。なお、Fe/Mn酸化物溶解法に関しては、研究実施計画には含まれていなかったが、研究の目的の達成に必須であったために、研究項目として追加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は「火山灰土壌における,酸性NH_2OH-HCl法によるMn/Fe酸化物の低い溶解性の原因解明」としているが、「火山灰土壌やその他の土壌の特性とMn/Fe酸化物の溶解性との関係の統計学的な解析」「異なる溶解メカニズムに基づく既存のMn/Fe酸化物溶解法によるMn/Feの抽出効率の比較」から、その原因が高いpH緩衝能に加えて、Mn/Fe酸化物表面に存在する非晶質Al鉱物やAl-腐植複合体による酸化還元反応の阻害であるという仮説を強く支持する結果を得たため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、火山灰土壌にも適用可能なMn酸化物選択溶解法(Mn酸化物中の重金属のみを選択的に土壌から抽出する方法)を開発する。 最終的に、今年度の成果も含めたこれらの成果を組み込んだ逐次抽出法を提案して、火山灰土壌中の重金属の適切な化学形態別分析を可能にする。
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Research Products
(3 results)