2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J00455
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前 伸一 京都大学, 再生医科学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ヒトiPS細胞 / 中間中胚葉 / 腎臓 |
Research Abstract |
腎臓を構成する細胞のほとんどは、胎生組織である中間中胚葉に由来することから、ヒト多能性幹細胞からそれらの細胞を分化誘導することが、腎臓再生の最初の重要なステップである。第12年度目までに、中間中胚葉で最も早期かつ特異的に発現するマーカーである核内転写因子OSR1に対するレポーター細胞株を樹立し、ヒト多能性幹細胞から分化誘導したOSR1陽性中間中胚葉細胞の腎臓、生殖腺、副腎皮質細胞への分化能などの発生生物学的機能を評価した。そこで、第3年度目の目標として、ヒト多能性幹細胞からOSR1陽性中間中胚葉を分化誘導することが可能な低分子化合物の探索と、低分子化合物で作製したOSR1陽性中間中胚葉の機能評価を掲げ、研究を実施した。まず、中胚葉と内胚葉の前駆細胞である中内胚葉からOSR1陽性細胞へ分化誘導可能な低分子化合物を探索する大規模な低分子化合物のスクリーニング系を構築した。構築したスクリーニング系を用いて、2つのレチノイド(AM580およびTTNPB)がOSR1陽性細胞への分化を促すことを明らかにした。分化誘導したOSR1陽性細胞の機能評価を行ったところ、それらの細胞は他の中間中胚葉マーカーを発現し、in vitroにおいて長期間培養することにより、出現頻度は低いが中間中胚葉に由来する腎構成細胞に分化した。さらに、マウス後腎細胞との器官培養にて3次元の尿細管様構造を形成した。より安価で安定している低分子化合物で腎臓に分化しうる中間中胚葉を分化誘導したここまでの研究成果を、第2著者としてPLoSONE誌に発表した。以上、低分子化合物を用いて腎臓に分化しうるOSR1陽性中間中胚葉細胞を高効率に作製し、器官培養によって一部の腎臓構造を再現できたことにより、腎構成細胞作製のための分化誘導技術の開発や、疾患モデル作製に向けた研究への発展が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
樹立したOSR1-GFPノックインヒトiPS細胞から中間中胚葉細胞を高効率に分化誘導する低分子化合物を同定し、腎臓に分化しうる発生生物学的機能を評価できたこと、および学会誌に発表できたことから、当初の計画通り順調に進展したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
増殖因子よりも安価かつ安定的に中間中胚葉を得ることのできる低分子化合物を見出すことができたが、中間中胚葉から腎臓を高効率に作製する方法の確立が急務である。中間中胚葉からは腎臓の他にも、生殖腺や副腎皮質が分化するため、中間中胚葉からそれぞれの細胞への分化を促す増殖因子や化合物を探索する。また、胎児内の部位および時期特異的な中間中胚葉を作製し、その発生生物学的機能を評価することで、腎臓発生に寄与しうる中間中胚葉細胞を明らかにする。
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Research Products
(3 results)