2011 Fiscal Year Annual Research Report
メビウス構造をモチーフとする新規拡張ポルフィリノイドの開発
Project/Area Number |
11J00457
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東野 智洋 京都大学, 理学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | ポルフィリノイド / 芳香族性 / リン / 硫黄 |
Research Abstract |
環拡張ポルフィリン類における新たな機能の開発、およびメビウス構造を有した新規化合物の開拓を目指して研究を行っている。これまでにリン原子を用いることで、メビウヌ反芳香族性をはじめとする様々な新奇な環拡張ポルフィリンのリン錯体が合成されてきた。そのような中で、ピロールユニットを5つ持つ環拡張ポルフィリンであるペンタフィリンに対しリンを作用させることで、複数の縮環部位を有することでその共役系が広がり、また明確な反芳香族性を示すリン錯体を合成した。さらに、このリン錯体は還元反応によって5価のリン原子を3価のリン原子へと還元することに成功し、ポルフィリノイドの化学において初めての3価のリン錯体であることを明らかにした。3価のリン原子を有する錯体は、金属やルイス酸などを用いたさらなる多量化・複合体形成に向けた重要な化合物であると言える。 また、環拡張ポルフィリンのベータ位に置換基を導入することによる新たな物性の発現、また高還元状態を安定化し単離可能にすることを目指した。電子求引性の置換基としてスルホニル基を選択し、ピロールユニット6つからなるヘキサフィリンを用いて検討を行った。実際にスルフィド基を導入したヘキサフィリンの合成に成功し、またスルホニル基へと酸化することが可能であることを見出した。ベータ位の置換基によってヘキサフィリン骨格の電子状態が変化することを明らかにしたほか、その他の挙動についても検討を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ペンタフィリンのリン錯体において、多重に縮環した構造的に非常に珍しい骨格を持ち、さらにポルフィリノイドの化学において初めての3価のリン原子を有する錯体を得ることに成功したことは、今後の展開に向けた重要な知見である。加えて、ベータ位に硫黄置換基を有するヘキサフィリンの合成に成功したことから、目的としているスルホニル基やスルフィド基を有するヘキサフィリンの挙動について十分な検討が行えると考えられるほか、リン以外の典型元素を有する環拡張ポルフィリンに関する知見が得られると考えられる。したがって、当初の目的に向け着実に進展しつつ、新たな知見をも得ることができたことから、当初の計画以上に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
硫黄原子を有するヘキサフィリンについて更なる検討を行い、高還元状態を実現できるかどうかを明らかにする。また、典型元素を用いることでメビウス構造を誘起することができなかった場合であっても、環拡張ポルフィリンの物性の変化が期待できると考えられるため、その他の典型元素を有する環拡張ポルフィリンについて検討を行う。さらに、環拡張ポルフィリンの一種であるヘプタフィリンを用いたリン錯体の合成および構造決定について検討を行いたいと考えている。
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Research Products
(7 results)