2011 Fiscal Year Annual Research Report
ラジカル安定化能を持つ窒素複素環をモチーフとした機能性化合物の設計と合成及び評価
Project/Area Number |
11J00469
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三浦 洋平 北海道大学, 大学院・理学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アザアセン / 有機安定ラジカル / 有機FET / 有機伝導体 / 有機EL / 鈴木-宮浦カップリング |
Research Abstract |
アザアセンは有機ELや有機FETなどの有機電子材料に広く利用されているアセン化合物の窒素類縁体であり、アザアセンも同様に有機電子材料への応用が期待できる化合物である。しかし、これまでにあまり多くの研究がなされていない。そこで本研究ではテトラセンの四つの炭素を窒素に置き換えたキノキサリノキノキサリンに注目し研究を行った。またそこから誘導されるラジカルについても調査を行った。 これまでに合成を行ったジヒドロジヨードジメトキシキノキサリノキノキサリンと種々のアリールホウ酸との鈴木-宮浦カップリングを用いて、フェニル基、アニシル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、チエニル基の置換したジヒドロキノキサリノキノキサリン誘導体を合成した。これらの化合物はその置換基によってUV-Visスペクトル、蛍光スペクトル、酸化還元特性が大きく異なり導入する置換基によってその電子構造が変化することを明らかにした。また、ジヒドロ体を酸化して得られるキノキサリノキノキサリンはNIRに及ぶ長波長の吸収を持ち、これら二つの化合物が酸化還元反応によって用意に相互変換可能な酸化還元系になることを明らかにした。 さらにベンゼン環が縮環したジメトキシキノキサリノキノキサリンの合成を行った。以前に合成を行ったテトラメトキシ置換体、ジヨードジメトキシ置換体およびジベンゾジメトキシキノキサリノキノキサリンから誘導されるラジカルのESRスペクトルの測定を大阪市立大学岡田惠次先生の研究室との共同研究により行い、これらのラジカルが観測可能なほど安定であること、ラジカルの特性などについての調査を行うことができた。 現在はさまざまな芳香環が置換したキノキサリノキノキサリン誘導体の合成法を確立し、新たな化合物の合成を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鈴木カップリングを用いてさまざまな置換基を有するキノキサリノキノキサリンの合成を行いUV-Visスペクトルおよびサイクリックボルタンメトリー測定からその特性の違いの調査を行うことができた。さらにジヨードジメトキシ、テトラメトキシおよびジベンゾキノキサリノキノキサリニルラジカルの合成を行い、それらのESRスペクトルを測定することでその安定性などの考察を行った。現在はさまざまなアリール基が縮環したキノキサリノキノキサリンの合成法を確立し、今後の研究の更なる進展が望める。
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Strategy for Future Research Activity |
さまざまな芳香環が縮環したキノキサリノキノキサリンの電子的特性の調査を行う。さらにそこからキノキサリノキノキサリニルラジカルの合成を進め、その物性の調査を行っていく。 また、ラジカル前駆体であるキノキサリノキノキサリンがブロードなNIR吸収を持つことや、ジヒドロキノキサリノキノキサリンが蛍光を持つなどこれらの化合物も興味深い特性を持つことが明らかとなったため、ラジカルだけでなく、それらの化合物についても詳しく研究を進める。
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