2012 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞形態形成における細胞膜輸送と細胞骨格系とのクロストーク機構の解明
Project/Area Number |
11J00497
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 篤史 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 神経細胞 / 神経突起 / リン脂質 / フリップ・フロップ / ホスファチジルエタノールアミン |
Research Abstract |
神経細胞は特徴的な神経突起を持つ。この神経突起の形態形成が正確に制御されることは、精密な神経ネットワーク形成に必須である。本研究は、神経細胞の形態形成において重要な「細胞膜輸送」と「細胞骨格系の再構築」がどのように協調し、神経細胞の形態変化を適切に制御しているのか、その分子機構を解明するために、細胞膜リン脂質ホスファチジルエタノールアミン(PE)に着目し、PEの合成、輸送、および挙動(フリップ・フロップ運動)による神経細胞の形態形成制御機構を解析している。昨年度までに私は、PEの合成が神経突起伸長に重要であることを示した。また、細胞膜脂質二重層中の内層に主に存在するPEが神経突起伸長時の成長円錐で外層に露出していることを示してきた。さらに、成長円錐でのPEのフリップ・フロップ運動を制御する可能性がある候補遺伝子を同定し、神経突起伸長に関与することを明らかにした。これらをふまえ今年度は、1.成長円錐におけるフリップ・フロップ運動を制御する候補遺伝子の神経突起伸長における役割の検討、2.フリップ・プロップ運動とアクチン細胞骨格との関係の検討をおこなった。 1.成長円錐でのPEのフリップ・フロップ運動を制御する候補遺伝子が、神経突起伸長に関与することをsiRNAや各種変異体を用いて証明した。 2.PEのフリップ・プロップ運動をペプチドや上記候補遺伝子により制御すると、成長円錐の形態が制御され、さらにアクチン細胞骨格の再構築に重要な低分子量G蛋白質であるRhoファミリーの活性が制御されることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに、神経突起伸長部においてホスファチジルエタノールアミン(PE)のフリップ・プロップ運動を制御する候補遺伝子を同定していた。その成果を踏まえて本年度は、その候補遺伝子が、神経突起の伸長に関与することをsiRNAや各種変異体を用いて証明した。また、PEのフリップ・フロップ運動が、細胞骨格系の再構築に重要な低分子量G蛋白質であるRhoファミリーの活性を制御することを発見した。これらの実験結果は、PEのフリップ・プロップ運動による神経突起伸長制御のメカニズムを明らかにする上で非常に重要な成果であり、本研究プロジェクトはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1.候補遺伝子が突起先端部のPEのフリップ・フロップ運動を制御しているかどうかを確認する。 2.候補遺伝子がin vivoにおける神経突起伸長に関与するかどうかを確認する。 3.どのような分子機構によって、PEのフリップ・フロップ運動が制御されるのか、その上流、下流の分子メカニズムを解明する。 4.PEの輸送がどのような分子機構によって制御されるかを検討する。
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