2012 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の有害寄生虫ウミクワガタ類幼生における種同定法の確立
Project/Area Number |
11J00527
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
太田 悠造 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 魚病 / 外部寄生虫 / ワラジムシ類 / 分類学的再検討 / 形態の対応 / 種同定 |
Research Abstract |
ワラジムシ目の1科であるウミクワガタ類は、幼生と成体で形態が大きく異なる。成体は自由生活性である一方で、幼生は魚類寄生性で、重度の寄生の場合、水産有用種の魚類に斃死を引き起こすこともある。しかし、種分類はオス成体の形態が中心で、幼生形態からは種同定が行なえない。更に我が国のワラジムシ類は、同定する上での記載が不十分であるうえ、同じ種に多くの学名が付けられているために、分類や同定が極めて困難である。ウミクワガタ科における、これらの問題を解決し、幼生形態のみでも種分類を行なえるような体制を確立するのが本研究の目的である。 ・日本産ウミクワガタ類の分類学的再検討:昨年度に引き続き、ウミクワガタ類のオス成体の6種のタイプ標本を拝借し、外部形態による分類学的再検討を行った。その結果、昨年度と合わせて17種は7種に整理された。この結果の一部は論文としてまとめ、投稿した。 ・幼生形態における種同定の試み:次に、4種のウミクワガタ類の幼生標本を用いて、種間の形態差を精査した。その結果、頭部のプロポーションと感覚孔の有無、腹尾節の三角形の形状に種間差があった。一方で尾肢などの付属肢の剛毛数は種間で安定しているか、種内で変異があることが分かった, ・ウミクワガタ相の調査:日本沿岸におけるウミクワガタ類のファウナの知見は乏しいため、引き続き野外調査を継続した。その結果、伊豆地方沿岸から2種、瀬戸内海から1種を新たに採集した。飼育実験の結果、幼生を成体に脱皮させることに成功し、各種の幼生と成体の形態を対応させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本産ウミクワガタ類の分類学的再検討を行なうにあたって、当初予定していたよりも多くの標本を拝借し精査を行なったため、若干遅れている。また、1年目の調査で、硬骨魚類から軟骨魚類へ宿主を変えていることが判明し、そちらの調査と論文執筆で、当初の計画よりも遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初1,2年目に予定していた、ウミクワガタ類の大顎の機能の検証を行なうが、時間との兼ね合いもあるため、本研究の目的である幼生の種同定法の確立を優先する。 2年目で4種のウミクワガタ類の幼生形態を精査したが、3年目では新たに得られた標本も取り入れ、より多くの種で同定に重要な形質をより明確にする。
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