2011 Fiscal Year Annual Research Report
物性論における双対性とトポロジー的側面についての研究
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11J00593
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 太郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超対称ゲージ理論 / 共形場理論 / 量子渦 / 分数量子ホール効果 / 格子フェルミオン |
Research Abstract |
オービフォルド(軌道体)分配関数と呼ばれる組合せ論的に定められた模型について,q変形と呼ばれる手法を巧みに用いることで,その漸近的な振る舞いを解析することが可能となった.これにより,4次元オービフォルド上のN=2超対称ゲージ理論に対するサイバーグ・ウィッテン曲線を導出することが出来た.このサイバーグ・ウィッテン曲線は,超対称ゲージ理論の低エネルギーにおける振る舞いを決定するものであり,特に近年は2次元共形場理論や,可積分系との関連が注目されている.さらにこのオービフォルド分配関数の理論を発展させ,一般の4次元トーリックオービフォルド上の分配関数の漸近的な振る舞いを記述するような行列模型の導出を行った.また2次元オービフォルドにおける量子渦についての研究も行った.オービフォルドというある種の境界条件を与えることにより,量子渦の解空間に対しても制限を与えることを示し,それによって量子渦の衝突問題を議論することも出来た.また4次元のソリトン理論との関係についても指摘した. オービフォルド理論の物性論への応用として,分数量子ホール効果への適用可能性についての考察を行った.具体的には,内部自由度を伴う多成分系分数量子ホール系における一重項状態と,それに等価な内部自由度を伴わない系の関係を明らかにすることが出来た.内部自由度を持つ量子ホール系は,グラフェンや,多層量子ホール系など,近年の実験技術の向上により,特に注目されている.この等価性を元に,近年提案されたジャック多項式を用いた一般的な分数量子ホール状態の記述法を適用し,例えば数値計算上で有用な基底となることなどについての提案を行った. その他にも、重力理論におけるトポロジカルな性質に着目し、カイラル熱効果と呼ばれる新しい現象の提案を行い、また新しい格子フェルミオンを用いたカイラル極限や、隠れた対称性についての研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採用初年度ということで、今後の研究に必要となる基礎的な側面について重点的に研究を行った。その結果、非常に普遍性の期待される新しい手法を開発することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた基礎的、あるいは技術的な結果を元に、今後はより具体的な物性系への応用面を見据えた研究を行う。たとえば応用可能性が期待されるのは、分数量子ホール系、グラフェン、高温超伝導における量子渦状態などである。また、応用面と同時に基礎的な側面についての研究も併せて行っていく。
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Research Products
(11 results)