2011 Fiscal Year Annual Research Report
極限磁気分解能をもつ走査型顕微鏡による異方的超伝導体の研究
Project/Area Number |
11J00644
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下澤 雅明 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超伝導 / 重い電子系 / 分子線エピタキシー法 / トンネル接合 |
Research Abstract |
本年度は、分子線エピタキシー法で作製した重い電子系化合物CeCoIn_5エピタキシャル薄膜を用いて、その物性研究をおこなった。具体的には、(1)Ce_<1-x>Yb_xCoIn_5エピタキシャル薄膜の作製およびその物性評価、(2)CeCoIn_5エピタキシャル薄膜を用いたトンネル接合の作製をおこなった。(1)の実験では最適条件を探し出すことで、均一で原子層レベルの平坦性を持つCe_<1-x>Yb_xCoIn_5エピタキシャル薄膜の作製に成功した。この薄膜を用いた物性評価から、Ce_<1-x>Yb_xCoIn_5に価数揺らぎの効果が存在したとしても、価数揺らぎがその超伝導状態や常伝導状態に重要な役割を果たしていないことが分かった。これは、各グループごとに相反する結果が得られているバルク試料とは異なる結果である。本研究の薄膜が均一であることを考慮に入れると、分子線エピタキシー法を用いた固溶体の実験が有用であることを示した。またこの実験を通して、「トンネル接合」の実験で重要となる平坦性の良い薄膜の作製技術も確立することができた。(2)の実験では、基板表面に人工的なポテンシャルを形成することで、CeCoIn_5エピタキシャル薄膜を作製する際に生じる析出物を試料表面から除去することに成功した。これにより、試料表面に敏感なトンネル接合の作製が大きく進捗した。この成果は、本来の目的でありトンネル接合の発展型といわれる「π接合」の作製に大きな役割を果たすと考えている。現在は、このクリーンな表面を持つCeCoIn_5エピタキシャル薄膜を用いてトンネル接合の作製に取り組んでおり、トンネル接合が完成するまであと少しのところまで来ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、分子線エピタキシー法で作製した重い電子系化合物CeCoIn_5エピタキシャル薄膜を用いて、その物性研究をおこなった。具体的には、(1)Ce_<1-x>Yb_xCoIn_5エピタキシャル薄膜の作製およびその物性評価、(2)CeCoIn_5エピタキシャル薄膜を用いたトンネル接合の作製をおこなった。これら2つの実験から、本来の目的であるπ接合の作製に重要である「均一で原子層レベルの平坦性を持ち、表面に析出物がないCeCoIn_5エピタキシャル薄膜」の作製手法を確立できたと考えている。そのため、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず現在取り組んでいるCeCoIn_5のトンネル接合を完成させ、このトンネル接合を用いて特異な超伝導状態であるCeCoIn_5の状態密度を直接的に観測する。次に、トンネル接合の作製技術を生かしてπ接合の作製に取り組み、超伝導のギャップ構造を議論していく予定である。またそれと同時に、さまざまな物質の超薄膜を用いて電界二重層トランジスタ(EDLT)の作製を行うことで、従来まで考えられなかったような新たな電子状態の実現にも取り組む予定である。
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Research Products
(9 results)