2012 Fiscal Year Annual Research Report
極限磁気分解能をもつ走査型顕微鏡による異方的超伝導体の研究
Project/Area Number |
11J00644
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下澤 雅明 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超伝導 / 重い電子系 / 分子線エピタキシー法 / トンネル接合 |
Research Abstract |
本年度も、分子線エピタキシー法で作製した重い電子系化合物CeCoIn_5エピタキシャル薄膜を用いて、超伝導状態の研究を行った。具体的には、(1)人工的にグローバルな空間反転対称性の破れを導入したCeCoIn_5/YbCoIn_5超格子の作製、およびそれを用いた空間反転対称性の破れと超伝導状態に関する研究、(2)薄膜の利点を生かして重い電子系化合物CeCoIn_5同士のポイントコンタクトの作製をおこなった。(1)の実験では、従来の人工超格子CeCoIn_5/YbCoIn_5におけるYbCoIn_5の層数に空間変調を加えることで、グローバルな空間反転対称性の破れを導入した人工超格子(変調型超格子)の作製に成功した。低温測定から変調型超格子でも超伝導の存在が確認された。また、グローバルな空間反転対称性の破れがある一定以上に増大すると、上部臨界磁場の角度依存性に異常な振る舞いが現れることが分かった。さらに、上部臨界磁場の温度依存性にも、空間反転対称性の破れが増大することでカスプ構造が観測される。これらの結果は、グローバルな空間反転対称性の破れによる効果で新奇超伝導相が実現していることを示唆している。(2)の実験では、CeCoIn_5エピタキシャル薄膜を用いたbow-tie junctionの作製に取り組んでいる。このbow-tie junctionは試料表面の平坦性には依存しないため、その作製は容易であると考えられる。トンネル接合の加工技術としては、FIBやフォトリソグラフィーなどを駆使した。これまでに、トンネル接合の加工条件をある程度導き出す所まで成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も、分子線エピタキシー法で作製した重い電子系化合物CeCoIn_5エピタキシャル薄膜を用いて、超伝導状態の研究を行った。具体的には、(1)人工的にグローバルな空間反転対称性の破れを導入したCeCoIn_5/YbCoIn_5超格子の作製とその物性研究、(2)薄膜の利点を生かして重い電子系化合物CeCoIn_5同士のポイントコンタクトの作製をおこなった。(1)の実験によりバルクの系では実現不可能な超伝導状態の創出に成功した。(2)の実験から、薄膜技術を用いたトンネル接合の有効性を示した。これらの結果を踏まえると、研究はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
CeCoIn_5のトンネル接合を完成させ、このトンネル接合を用いてFFLO相の観測に取り組む。次に、トンネル接合の作製技術を生かしてπ接合の作製に取り組み、超伝導電流を評価することで、超伝導対称性の決定を行う予定である。
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Research Products
(6 results)