2011 Fiscal Year Annual Research Report
準粒子励起に敏感なプローブを用いた異方的超伝導体の超伝導対称性の研究
Project/Area Number |
11J00645
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
利根川 翔 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超伝導 / 重い電子系 / サイクロトロン共鳴 / 隠れた秩序相 |
Research Abstract |
重い電子系と呼ばれるf電子系化合物において超伝導電子対が形成されると強い電子間相互作用により特異な超伝導状態が実現する。その超伝導状態は多種多様にわたっており、例えば反強磁性や強磁性といった磁気秩序と共存するものが報告されてきた。これに対し重い電子系超伝導体URu2Si2は「隠れた秩序相」と呼ばれる、その秩序変数が四半世紀もの間明らかにされていない非磁性相と共存しており、非常に多くの興味がもたれてきた。磁気秩序と共存する超伝導物質の超伝導発現機構がその磁気秩序と密接に関連していることから、URu2Si2の超伝導状態を明らかにする上で隠れた秩序相を調べることは非常に重要であると考えられる。隠れた秩序相において「何の対称性が破れているのか」という最も根本的な問題を考えることは隠れた秩序相の秩序変数を解明する上で重要な役割を示すが、これに対して最近磁気トルクの実験で結晶に保たれている四回対称性が破られていることが明らかとなった。そこで我々は四回対称性が破れている更なる証拠を得るためにマイクロ波空洞共振器を用いてサイクロトロン共鳴を行った。サイクロトロン共鳴測定はFermi面の極値軌道を運動する電子の有効質量を直接測定できる強力な手法である。これによりFermi面の電子質量の角度依存性を明らかにし、さらにバンド計算と比較することによって隠れた秩序相における電子構造を決定した。また最も大きなホール面に対応すると考えられる共鳴線が[100]方向から[110]方向に磁場を面内で回転させたときに2つに分裂する振舞いを観測した。この分裂は有効質量が面内異方性をもち、電子構造自体が四回対称性を破っていることを強く示唆している。今後は超伝導状態においても電子状態の四回対称性が破れているかを調べ、隠れた秩序相と超伝導相との関連を調べたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は熱電係数の測定手法をフランスの研究室で学び、帰国後はプローブの開発に従事してきた。また重い電子系超伝導体URu2Si2のサイクロトロン共鳴の測定結果を論文に投稿するために解析を進め、多くの学会で発表を行ってきた。そのため比熱測定プローブの開発を進めるのが遅くなってしまった。しかし、フランスで学んだノイズ除去の手法を用い、当初の予定よりずっと精度のよい比熱測定プローブを現在設計している。そのため研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、開発を行っている熱電係数測定プローブを完成させフランスとの共同研究を完結する。その後、比熱測定プローブの開発を終えトンネルダイオード発振器と組み合わせて重い電子系超伝導体URu2Si2の超伝導ギャップ対称性について議論していきたい。またURu2Si2において磁気トルク実験により超伝導状態でも四回対称性が破れているか議論したい。
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