2012 Fiscal Year Annual Research Report
極域における湖沼・陸上生態系の発達と環境変遷の解明に向けた物質循環研究
Project/Area Number |
11J00668
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田邊 優貴子 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2011 – 2013-03-31
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Keywords | 淡水湖沼 / 安定同位体 / 南極・北極 / 物質循環 / 光合成 / 一次生産 / 生態系遷移 / 環境変遷 |
Research Abstract |
湖沼を含む陸域生態系における物質循環と生態系の発達過程を明らかにすることを目的とし、南極から持ち帰った、(1)湖底光合成生物堆積物コア、(2)湖底光合成生物堆積物中の間隙水、(3)湖水、(4)集水域の雪氷水、(5)集水域の生物試料の各種化学分析を行った。試料(1)と(5)については、窒素・炭素・リン含有量・15N安定同位体比・13C安定同位体比・14C年代測定を、試料(2)~(4)については、溶存無機栄養塩頚(硝酸、亜硝酸、アンモニウム、リン酸、ケイ酸)・溶存有機炭素・全炭素を分析した。分析の結果、堆積物表層1cm中の間隙水には湖水の2-220倍の溶存無機窒素(硝酸、亜硝酸、アンモニウム)、3-120倍のリン酸が含まれていることが明らかとなり、その濃度は温帯域の富栄養化湖沼と同程度もしくは高いものであった。現場で測定した湖底光合成生物群集の光合成速度と13C安定同位体比との間には有意な正の相関があり、南極の湖底光合成生物群集の13C安定同位体比は光合成速度を反映した値であると考えられた。湖底に到達する光スペクトルのうち、特に全光エネルギーに対する紫外線含有比と13C安定同位体比との間には強い負の相関が見られ、また、集水域面積と紫外線含有比との間にも強い負の相関があった。つまり、集水域面積が大きいほど外部からの紫外線吸収物質流入量が増加し、その結果、水中を透過する光の中に含まれる紫外線量の割合が減少することで湖底の光環境がマイルドになり、光合成生物による一次生産が活発になると考えられた。本研究によって、貧栄養と考えられてきた南極湖沼の湖底には莫大な栄養塩が蓄積されており、栄養制限よりも光による制限を受けていることが明らかになった。長年、湖沼中において光合成生産を決定するものとして最もよく研究されてきたのが栄養塩類であるが、2009年に、貧栄養湖沼の光合成生産は光量で決定されると言う研究が発表された。しかし、単なる光量だけでなく、入射する光の質によって、貧栄養湖沼の光合成生産が左右されるという新たな知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Reason
平成24年度で辞退のため、平成25年度以降は実施せず。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度で辞退のため、平成25年度以降は実施せず。
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Research Products
(25 results)
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[Journal Article] Holocene lake development and glacial-isostatic uplift at Lake Skallen and Lake Oyako, Lu-tzow-Holm Bay, East Antarctica : based on biogeocheaical facies and molecular signatures.2012
Author(s)
Takano Y, Tyler JJ, Kojima H, Yokoyama Y, Tanabe Y, Sato T, Ogawa ON, Ohkouchi N, Fukui M
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Journal Title
Applied Geochemistry
Volume: 27
Pages: 2546-2559
DOI
Peer Reviewed
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