2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J00717
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前田 陽祐 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | CP非保存 / 新物理 |
Research Abstract |
物質優勢の宇宙の成り立ちは、現在の素粒子標準理論に於ける小林益川理論によるCP非対称性では全く説明出来ない。そこで、新たなCP非保存過程が必要とされているが、その探索が現在の素粒子物理学の大きな課題の一つとなっている。茨城県東海村の大強度陽速器施設(J-PARC)で進められているKOTO実験は、中性K中間子の稀崩壊事象の探索を通じて、標準理論を超える新しい物理の探索を行う。標準理論による分岐比の予言値は2.4x10^-(-11)であり、この事象を観測する為にはこれ以外のK中間子の崩壊を高精度で区別可能な検出器の導入が必須である。私はKOTO実験に必要なこの高精度検出器の製作を行うことで、この実験を大きく推進させた。特に3mm厚のプラスチックシンチレータからなり、直径2mの円全体を覆い、高い検出効率でK中間崩壊で生じる荷電粒子を検出する荷電粒子検出器(Charged Veto)の製作を行った。先ず、シミュレーションによる形状の満たすべき条件に関する研究と、実物の厚み全数検査によりその加工方法について決定した。更にシンチレータとそこからの光を読み出す為の波長変換ファイバーとの接着方法について研究を行い、これをもとに接着剤の自動塗布装置を中心とするモジュール量産システムの構築を行ってきた。製作したモジュールは90Sr線源を用いて全数性能検査を行い、全てが十分な性能を達成していることを確認している。システムは順調に稼働し、これで必要な構成要素の殆どの製作を完了することが出来た。残りに関しても間もなく完了する見込みであり、新物理探索に必要とされるだけの十分な性能を持つ検出器製作を行うことに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
KOTOは2012年度内の物理ラン開始に向け、各検出器の準備を現在進めている。私が本年度に担当した荷電粒子検出器に関しては、2012年秋に予定している全検出器完成に先立ってインストールを行い、完成した検出器全体として性能評価を行なうのに十分なペースで製作を進めることが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は先ず進めることは、検出器モジュール量産を完了し、現地J-PARCにおいて製作した各モジュールを組み立て、検出器として完成させることである。建設完了後は宇宙線やビームを用いた性能評価を行い、検出器全体として十分な性能が出ていることを確認する。その上で他の検出器と合わせてKOTO実験検出器全体を完成し、物理ランに向けた全検出器のコミッショニングを行う。東日本大震災の影響でJ-PARC並びに建設途中であったKOTO検出器は復旧作業と今後の地震対策に追われ、当初より凡そ一年計画が遅れているが、2012年度末に物理ランを行い、新物理に感度のある領域での崩壊事象の探索を行うことを目指す。
|
Research Products
(7 results)