2011 Fiscal Year Annual Research Report
金属イオンの配位による高原子価金属オキソ種の活性化
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11J00730
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森本 祐麻 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高原子価金属オキソ種 / 酸化反応 / 金属イオン / 電子移動 / C-H結合活性化 / 酸素原子移動反応 / 国際情報交換 韓国 |
Research Abstract |
高原子価鉄オキソ錯体は種々の酸化酵素の触媒活性種として機能しており、基質の水酸化、エポキシ化、塩素化など多種多様な反応を行う鍵中間体として働く事が知られている化学種である。高原子価鉄オキソ錯体は高い反応性を持つため安定的に単離することが難しかったが、近年その手法が確立し、その反応性を制御する因子を明らかにする事が次の課題となっている。これまでの研究では鉄中心に配位する配位子が高原子価鉄オキソ錯体の反応性に対する影響について精力的に研究されて来たが、鉄中心に配位したオキソ配位子と外部因子の相互作用による反応性制御の例は多くない。本研究ではオキソ配位子と金属イオンの相互作用がその反応性に与える効果について検討した。まず金属イオンが鉄四価オキソ錯体による電子移動酸化反応に与える効果について検討すると、金属イオンの持つルイス酸性度が高いほど大きな電子移動の加速効果を持つことが分かった。その中で最も高いルイス酸性度の高いスカンジウムイオンを用いた実験では、その加速効果は最大10^8にも上ることが分かった。次に最も大きな電子移動の加速効果を持つことの分かったスカンジウムイオンが、鉄四価オキソ錯体によるチオアニソール類縁体のスルフォキシド化に与える効果について検討した。その結果、鉄四価オキソ錯体からチオアニソール類縁体への酸素原子移動反応も約100倍加速される事が分かった。この反応機構を詳細に検討した結果、一段階の酸素原子移動反応が、電子移動反応と酸素移動反応の二段階に別れていることが分かった。鉄四価オキソ錯体によるジメチルアニリン類縁体の脱メチル化反応についてもスカンジウムイオンの効果を検討した所、加速効果が見られ、この場合も素反応である基質から鉄四価オキソ錯体への電子移動が加速される事によって反応全体が加速されている事が分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここまでの研究で、金属イオンが鉄四価オキソ錯体による基質のスルフォキシル化、N-C結合の切断反応等を加速する事を見いだした。その反応機構の解析から、これらの加速効果が金属イオンによる鉄四価オキソ錯体の一電子還元電位の向上によるものであることが分かっている。研究成果は査読付き一流紙に四報掲載されており、オキソ種の反応性を金属イオンによって向上させるという研究の目的はほぼ達成されていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では目的の一つとして、炭化水素の酸化反応を掲げている。これまで金属イオンによって鉄四価オキソ錯体の一電子酸化力が高くなる事が分かっているので、この効果がC-H結合の活性化にどのような影響を与えるかを検討したい。また、金属パーオキソ種に金属イオンの与える効果や、金属イオンと金属オキソ種の相互作用が反応選択性、基質特異性に及ぼす効果についての検討も順次進めて行きたい。
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