2012 Fiscal Year Annual Research Report
金属イオンの配位による高原子価金属オキソ種の活性化
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11J00730
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森本 祐麻 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高原子価金属オキソ錯体 / 酸化反応 / ルイス酸 / 電子移動 / プロトン / 塩基 |
Research Abstract |
鉄四価オキソ錯体は常温常圧という温和な条件下で多種多様な反応を行う非常に活性の高い化学種であり、種々の酸化酵素中でも触媒活性種として働いていることが知られている。その反応性を理解し、制御することは効率的な酸化反応系の構築へとつながる。生体ではオキソ錯体の反応性は様々な因子で制御されているが、オキソ配位子とルイス酸の相互作用によっても、その反応性は制御されていると考えられる。しかし、これまでの研究ではそのような効果はあまり考慮されてこなかった。そこで本研究では、スカンジウムイオン等のルイス酸として働く金属イオンによる鉄四価オキソ錯体の反応性制御について検討した。当研究代表者は一年目の研究で金属イオンは鉄オキソ錯体と相互作用することで電子移動酸化を促進できること等を示している。二年目はこれを受け、この金属イオンによるオキソ錯体の電子移動特性の変化が、C-H結合の切断を含む有機化合物の酸化反応に与える効果について検討した。[Fe^<IV>(O)(N4Py)]^<2+>(N4Py=N,N-bis(2-pyridylmethyl)-N-bis(2-pyridyl)methylamine)による、異なる一電子酸化電位(2.88-1.20V vs SCE)を持つベンジルアルコール類縁体の酸化反応は、基質の一電子酸化電位が1.7Vの以下になると、10mMのスカンジウムイオンの添加によって劇的に加速される(最大120倍)ことが分かった。また、この加速は反応の第一ステップである水素原子移動がスカンジウムイオンの添加によって電子移動とプロトン移動に分割されたことに由来することを明らかにした。ここで得られた知見は、より高活性で反応を直接観測出来ない系でも生かされることが期待される。また、鉄四価オキソ錯体のみならずマンガン四価オキソ錯体も金属イオンによって酸化力が高くなることを明らかにした。この他に、プロトンと金属イオンの比較、塩基による鉄三価ヒドロキソ錯体から鉄四価オキソ錯体の生成反応の加速効果の検討等の研究も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究で、金属イオンによる電子移動の活性化がより複雑な酸化反応に与える効果について詳細に明らかにすることに成功した。また、鉄のみならず、マンガンの四価オキソ錯体でも同様の金属イオンによる錯体の酸化力が高められることも報告した。研究成果は査読付き-流紙に、去年の四報を上回る五報掲載されており、研究は当初の計画以上に発展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では目的の一つとして、炭化水素の酸化反応を掲げている。ここまでの研究では活性の低い錯体をあえて用いることで詳細に反応機構を検討して来た。多くの知見が蓄積されてきているので、今後はより活性の高い鉄錯体をもちいて、安定なC-H結合をもつ化合物の酸化を検討して行くことを予定している。また、マンガンオキソ錯体にルイス酸が与える効果についてもより詳細に検討し、鉄の場合との相違を明らかにして行く予定である。
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