2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J00778
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
東山 大毅 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 三叉神経 / 上顎神経 / 顎骨弓 / 脊椎動物 / 顎口類 / 顔面突起 / 顎 / 進化 |
Research Abstract |
三叉神経は眼神経と上下顎神経の二部分から成り、このうち後者より発する上顎神経・下顎神経はそれぞれ上あご・下あごに対応付けられる。しかし、上顎神経の分布と顎口類の上あごを構成する発生原基との対応関係にはいまだ不明な点が多い。本研究では、上顎神経と上あごの発生過程を顎口類間で比較し、その進化について考察している。 前年度までにおこなったマウス、チョウザメ、トラザメの観察により、それまで顎骨弓の背側より生じる上顎突起に分布する、単一の形態要素ととらえられてきた上顎神経は、顎前領域に分布する鼻口蓋神経の相同物と、上顎突起に固有の神経枝(すなわち、顎口類に特有の上顎突起に付随する神経枝)とから成ると予想された。本年度、顎骨弓に特異的な遺伝子として知られるDox1の発現をマウスにおいて確認したところ、鼻口蓋神経の分布する領域に明確な発現が見られなかったことからもこの考えが支持される。 しかし、マウスと同じ羊膜類である、双弓類のニワトリとソメワケササクレヤモリには、鼻口蓋神経に対応する上顎神経の分枝が存在しなかった。本年度に羊膜類の外群にあたる両生類(メキシコサラマンダー、アフリカツメガエル)の観察をおこなったところ、上顎神経が極端に小さく、一次口蓋が眼神経の末梢に支配されるなど、他の動物には見られない特徴があった。さらに外群にあたるハイギョやシーラカンスについて文献調査をおこなったが、詳細な記載は得られなかった。しかし、チョウザメと同じ条鰭類であるアミアやポリプテルスでは、チョウザメ同様に鼻口蓋神経に相当する神経の存在が確認できた。 系統関係より、鼻口蓋神経は顎口類祖先的に存在しており、一部の両生類や双弓類ではこれが二次的に消失したと推測される。顎を獲得していない無顎類にも、上顎神経に似た上下顎神経の分枝が存在することが知られていたが、これは顎前領域に分布する点で、鼻口蓋神経の祖先型と示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
両生類や条鰭類の試料の収集、観察に大きく時間を割き、円口類や化石記録を観察することができなかった。しかしまた、これらに関して近年論文が出版されており、本研究に大いに役立てることができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題として以下の二点が挙げられる。 (1)双弓類において、どのような発生上の変化が鼻口蓋神経の進化的消失を引き起こしたか。 (2)顎口類において三叉神経の分枝形態をパターニングする分子発生的機構としてはどのようなものがあり、それは円口類における同等の機構とどのように異なるのか。 特に(1)に関して、哺乳類と双弓類とでは顔面を構成する原基が非常によく共通するにもかかわらず、上顎神経のパターンが大きく異なる。マウスとニワトリを用い、この違いがどの時点で生じ、またその背景にどういった機構がはたらいているかを解析しようと試みている。
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Research Products
(1 results)