2012 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質フラスコ内部における非天然多核金属中心の構築と新規生体触媒への展開
Project/Area Number |
11J00791
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡本 泰典 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鉄二核タンパク質 / ヘムエリスリン / DcrH-Hr / 酸素結合能 / 酸素活性化能 / 疎水性空孔 / 変異体 / 機能改変 |
Research Abstract |
本研究では酸素結合タンパク質DcrH-Hrの活性中心である二核鉄配位サイトの改変を実施し、新規生体金属触媒の創製を目的としている。直裁的かつクリーンな反応経路で不活性結合を活性化するメタンモノオキシゲナーゼ(MMO)の酸素活性可能は非常に魅力的であるが、構造的な複雑性から取り扱いが難しい。そこで、4-ヘリックス・バンドル中にカルボキシラート架橋された二核鉄中心を有するという構造的類似性を有し、取り扱いの容易かつ大量発現可能な二核鉄タンパク質DcrH-Hrを研究対象とし、その活性中心を錯体化学的な知見に基づいて合理的に設計することで酸素結合能からMMOのような酸素活性化能への改変に取り組んでいる。 二年目である本年度は昨年度に見出した野生型とは異なる挙動を示す変異体についてより詳細な分光学的手法による解析を行った。二核鉄近傍に位置する非配位性のイソロイシン119番を配位性アミノ酸残基であるグルタミン酸へと置換した変異体(I119E)は、導入したグルタミン酸のカルボキシラートが二核鉄に直接結合していることをラマン分光測定や結晶構造解析により確認した。このような配位アミノ酸の直接的な改変は多くの場合で二核鉄構造を保持できないため、これまでに報告例は少ない。さらにI119E変異体では二核鉄を構成する配位アミノ酸のイミダゾールとカルボキシラートの数を変化させることで二核鉄の酸化還元電位が負側にシフトすることを確認した。これは二核鉄を構成する配位アミノ酸の違いに起因すると考えられている可逆的な酸素結合能あるいは酸素活性化能の違いを理解する上で重要な知見である。また、二核鉄近傍に位置する非配位性のイソロイシン119番をヒスチジンへと置換した変異体も作製した。このI119Hでは野生型には見られないグアイアコールやシクロヘキサジエンの過酸化水素による酸化反応が進行することを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年目では野生型と異なる外部配位子との結合挙動を示し、さらに活性中心の酸化還元電位のシフトを示す活性中心の配位アミノ酸変異体(I119E)の機能解析に行った。さらに、この変異体の結晶構造解析にも成功した。 このようなに活性中心の二核鉄の配位アミノ酸の直接的な改変例はこれまでにほとんど例をみない。さらに、野生型には見られないグアイアコールやシクロヘキサジエンの酸化能を示す変異体(I119H)も見出しており、本課題の目標である二核鉄の改変による触媒能の付与を達成しつつあると考えられ、概ね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は野生型には見られないグアイアコールやシクロヘキサジエン等に対して過酸化水素による酸化能を有すると考えられる1119H変異体について詳しく詳細な機能解析を行う。まずはその構造を得るためにX線結晶構造解析を行う。また、分光学的な手法を用いてその反応機構の解析を行う。反応中間体の同定とその機構に基づき、更なる活性中心への変異の導入等により機能の向上を図る。
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