2012 Fiscal Year Annual Research Report
IL-17とIL-6信号伝達経路の相乗効果を制御する分子機構の解析
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11J00819
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
原田 誠也 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | IL-6 / IL-17 / Epiregulin / ゲノムワイドスクリーニング / ゲノムワイド連鎖解析 / 慢性炎症性疾患 / 上皮成長因子受容体 / 創薬標的 |
Research Abstract |
平成24年度は、IL-17とIL-6信号伝達経路の相乗効果(IL-6アンプ)を制御する分子を同定するために行ったゲノムワイドスクリーニングの解析が完了した。shRNAライブラリーを用いたノックダウンスクリーニングの結果、1178個の遺伝子がIL-6アンプを制御する候補分子として挙げられた。さらに、スクリーニングで得られた候補分子のうち27個に関してsiRNAを用いたノックダウンによる再現性を確認した。また、IL-6アンプの標的分子の同定も行った。マウスとヒトのDNAマイクロアレイ解析の結果、マウスで542個、ヒトで885個の遺伝子がIL-6アンプの活性化によって発現亢進することが分かった。スクリーニングとDNAマイクロアレイで同定された遺伝子について、ゲノムワイド関連解析(GWAS)を行うと、今回同定されたIL--6アンプ関連遺伝子のリストには自己免疫疾患だけでなく、代謝性疾患や神経変性疾患等の既知のヒト疾患関連遺伝子が多く濃縮されていることが明らかとなった。すなわち、IL-6アンプの活性化が様々な慢性炎症性疾患の病態に関与する可能性が示唆された。さらに、平成23年度の研究でIL-6アンプの活性化を亢進することが明らかとなった上皮成長因子受容体(EGFR)は、IL-6アンプの標的分子でもあることが分かった。これらの成果により、Epiregulin-EGFR信号系がIL-6アンプの活性化を制御することに加え、他にも約1700個の分子がIL-6アンプの制御及び慢性炎症性疾患の発症に重要である可能性が示唆された。 今後、本研究で同定された約1700個のIL-6アンプ関連遺伝子が慢性炎症疾患の新規創薬標的になることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、IL-17とIL-6信号伝達経路の相乗効果(IL-6アンプ)を制御する分子の一つとしてEGFRを見出した。EGFR信号系は、PI3Kαを介してNF-κBを活性化することでIL-6やIL-17と相乗的にIL-6や炎症性ケモカインCCL20の発現を亢進していた。さらに、IL-6アンプの活性化により、非免疫系細胞においてEGFRのリガンドであるEpiregulinの発現が誘導され、Epiregulinは自身の増幅ループを形成してさらにIL-6アンプの活性化を亢進するという新規概念を示した。スクリーニングの解析結果から、Epiregulinの他に約1700個の分子がIL-6アンプの活性化に関与する可能性も見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、Epiregulinによって発現が誘導されるIL-6以外の分子を同定したいと考えている。具体的には、関節リウマチや多発性硬化症患者の血清中で高値を示した増殖因子に着目し、線維芽細胞等にEpiregulinの刺激を行った際に発現が亢進するか検討する。その分子を同定した後、それらの分子の中和抗体の投与によって、関節リウマチモデルや多発性硬化症モデルの発症が抑制されるか検討する。
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Research Products
(9 results)