Research Abstract |
当該年度に実施した研究の成果として以下の点を挙げる. 1.衛星搭載用VHF波帯広帯域ディジタル干渉計の研究・開発 2009年に既に運用を行った,衛星搭載用VHF波帯広帯域ディジタル干渉計を実現する基礎実証衛星「まいど1号」による観測性能評価等を行い,論文としてまとめ,投稿した(電気学会誌).「まいど1号」の受信波形を解析し,電離層電磁波伝搬モデルを適用し,パルス幅の変化について考察した.その結果と雷放電地上観測網(World Wide Lightning Location Network)との観測結果を比較し,雷放電の放射源位置に関して,一致した見解が得られた.また,同内容についての学会発表(ICAE 2011,大気電気学会,地球惑星科学連合大会)にて発表を行った 2.電磁波到来方向の補正演算アルゴリズム 宇宙空間からVHF波帯電磁波放射源の到来方向を求めるために,電離層内の屈折を考慮した補正演算が必要である,具体的には,各高度に国際標準電離層モデルを用いた電子密度,衝突周波数,地球磁場を考慮した電離層モデルを作成し,高精度かつ計算コストが低い到来方向の補正演算アルゴリズムの開発を行う.このうち該当年度に,電離層電磁波伝搬モデルの作成を行った,来年度は,本モデルを用いた高精度かつ計算コストの低い補正計算アルゴリズムの作成を行う. 3.JEM-GLIMS MISSION(2012)による観測データの解析 また,JEM-GLIMS MISSIONにおいて,2012年の打ち上げに向けてこれまでに観測機器製作,試験を終えている.また,データ転送等,運用に関して,運用を担当するJAXA,他協力機関,大学等との打合せを行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
JEM-GLIMS MISSIONが当初の計画より少し遅れて打ち上げ(2012年夏)られること以外は,基礎実証衛星「まいど1号」のデータを用いた電離層モデルの構築等,上記に述べた通りおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
JEM-GLIMS MISSIONにおいて,電磁波到来方向の補正演算アルゴリズムの作成,実証を行うことが重要である.宇宙で観測された電磁波の電磁波放射源位置や放射現象の特定は非常に難しく問題点として挙げられる.現在考えられる実証方法としては電磁波観測と光学観測機器の同時観測による実証である。 また,最も有効な実証方法として,地上観測と宇宙観測の同時観測が挙げられるが,これに関してはデータ取得,転送方法の違いにより難しいと考えられるため,これに対する対応策として,我々大阪大学雷研究グループが現在日本で行っている雷放電観測網(関西エリア)の観測との同時観測が最も有効であると考えられる. 以上の検証を経て,補正演算アルゴリズムの作成,実証,改良を繰り返すことによって,人工衛星搭載用VHF波帯広帯域ディジタル干渉計への適用を推進する.
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