2011 Fiscal Year Annual Research Report
最遠方宇宙における超大質量ブラックホールの形成シナリ
Project/Area Number |
11J00838
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲吉 恒平 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超大質量ブラックホール |
Research Abstract |
太陽の1億倍以上の質量をもつ超大質量ブラックホールは、我々の銀河中心だけでなく赤方偏移が6を越える宇宙初期にも存在することが観測から明らかになって来た。特に、宇宙初期の超大質量ブラックホールは短時間で形成される必要がある。特に、太陽の10万倍以上の質量を持つ超大質量星の形成が重要となる。従来の形成シナリオでは、超大質量星は初代星からの紫外線中で形成されると考えられて来た。なぜならば、紫外線によりガス中の水素分子が解離され、ガスは分裂が抑制されて大質量のまま崩壊し星を形成するためである。しかし、このシナリオで仮定される紫外線の強度は非常に大きく、宇宙初期に実現可能性は低いと考えられている。本年度は、紫外線の起源である初代星からの宇宙線やX線を考えた場合に、従来のシナリオがどのように変更されるかを調べた。宇宙線やX線はガスを電離することで水素分子の形成を促進する効果があるので、超大質量星の形成に必要な紫外線はよりも強くなり、形成可能性は著しく制限されることが分かった。次に、近年の宇宙論的シミュレーションによる銀河形成の研究に注目し、強い紫外線の存在を仮定しない新しい超大質量星の形成シナリオの構築に取り組んだ。銀河中心部に形成される高密度の衝撃波領域におけるガスの進化を計算した結果、紫外線が全く存在しない場合でも、ガス同士の衝突により水素分子が解離されて、超大質量星が形成されるガスは分裂を回避して崩壊する新しい熱進化経路を発見した。このシナリオでは、銀河形成時と同時に超大質量ブラックホールの起源となる超大質量星が形成されるために、銀河との共進化にも重要な寄与を与えると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の研究目的に記載した、1年目と2年目に行う予定の研究を既に終えて、論文を出版することが出来たから。また、3年目に行う予定の研究にも取り組み出したから。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で明らかにした、超大質量星の形成過程の枠組みで原始星への降着進化を計算し、宇宙初期の超大質量ブラックホールの種になるのかを検討する。また、大質量星は一般的に不安定であるために、それを解析して最終的にブラックホールになる質量を議論する。
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Research Products
(6 results)