2011 Fiscal Year Annual Research Report
超弦理論・量子重力のダイナミクス解明への可解模型からのアプローチ
Project/Area Number |
11J00842
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川口 維男 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 可積分系 / 非線形シグマ模型 / AdS/DFT対応 |
Research Abstract |
研究の背景: 近年のAdS/CFT対応の研究の中で、その背後にある可積分構造の重要性が明らかになってきた。対称性や可積分性等の要請から決定されたスピン鎖模型を用いて、超対称ゲージ理論や超弦理論における摂動計算の結果を再現することができる。 研究の内容: この現状を踏まえて、本研究では可積分構造を保存するAdS/CFT対応の変形を考える。特に我々は3次元AdS空間の変形であるwarped AdS3を考え、その上を運動する非線形シグマ模型を議論した。 この模型は三角型の可積分模型として記述されることが以前より認識されていた。今回の研究で、我々はこのシグマ模型が有理型の可積分模型としても記述できることを示し、古典可積分構造に対して2通りの見方が存在することを示した。この性質は"hybrid integrability"と呼ばれるべきものである。 またwarped AdS3の場合の解析を応用することで、3次元Schrodinger時空上を運動する非線形シグマ模型の古典可積分構造も議論した。このシグマ模型もまたhybridな古典可積分構造を持つことが明らかとなった。 研究の意義: 有理型の記述は三角型の記述と比べて取り扱いが容易であり、より多くの解析方法が確立されている。有理型の記述が発見されたことで、この模型に対する解析が一層進むことが期待される。 近年、warped AdS3とAdS3の類似性が示唆されている。Hybrid integrabilityは可積分構造からこの類似性を説明するものと考えられる。Hybrid integrabilityからwarped AdS3上の弦理論やそれを用いたAdS/CFT対応の拡張に対する新たな知見が得られるものと期待される。 またSchrodinger時空上のシグマ模型はAdS/CFT対応を用いて物性系を考える際に頻繁に現れる。この模型の可積分構造を明らかにしたことで物性系への応用に関しても進展が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの可積分系の研究では、一つの模型に対して2種類の記述(hybridな可積分構造)が存在するという可能性は見過ごされてきた。本研究により、warped AdS3上のシグマ模型がそのような構造を持つことが発見された。すなわち、今まで三角型の模型であると考えられていたこの模型に対して、有理型の記述が有効であることが分かり、解析の幅が広がった。
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Strategy for Future Research Activity |
warped AdS3上のシグマ模型に対して有理型の記述に基づいた解析を進める。有理型の模型は三角型よりも扱いが容易であり、より多くの解析手法が確立されている。これによりwarped AdS3/dipole CFT2対応との関係を議論したり、Kerr/CFT対応の背後にある構造を可積分性の立場から探ることを目的として今後の研究を進める。 またSchrodinger時空上のシグマ模型の可積分構造に基づき、AdS/CFT対応を用いた物性系への応用についてもさらに理解を深めたい。
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Research Products
(9 results)