2011 Fiscal Year Annual Research Report
超新星残骸における過電離プラズマ生成と宇宙線加速機構の研究
Project/Area Number |
11J00845
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大西 隆雄 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 過電離プラズマ / ASTRO-H / SXI |
Research Abstract |
超新星残骸における過電離プラズマ形成メカニズムを考察するため、超新星残骸G359.1-0.5の研究を行った。X線天文衛星ASCAの先行研究では、超新星残骸プラズマ中のシリコンはヘリウム状まで電離が進んでいる一方、珪素では水素状にまで電離が進んでいることが示されていた。珪素はシリコンより重く電子数が多いため、一つのプラズマにこのようなシリコンと珪素が混在しているとは考えにくく、非常に特異な電離状態にあることを示唆していた。私はX線天文衛星Suzakuを用いてこの超新星残骸を観測し、通常の電離平衡状態にあるプラズマからは考えられないほど強い再結合連続X線を検出した。これは自由電子の再結合が頻繁に起こっていることを意味しており、過電離プラズマの直接証拠である。また、過去に発見された超新星残骸とは異なり、初めて軟X線帯域でのフルバンドフィットに成功した。その結果、電子温度0.29keV、電離温度0.77keVを求めることができ、現時点で最も過電離度が大きい過電離プラズマであることを突き止めた。以上の結果は、論文としてまとめ、国内外を問わず研究会等で発表している。 本研究のさらなる発展には、軟X線帯域での優れたエネルギー分解を誇るSXSによる超精密X線分光が必要不可欠である。従来の検出器では不可能だったプラズマ診断が可能にする。それに加え、SXIによる軟X線帯域でのX線撮像、HXIによる硬X線帯域でのX線撮像による過電離プラズマや硬X線の空間分布の解明も必要不可欠である。これらの検出器はすべて次期X線天文衛星ASTRO-Hに搭載予定であり、申請者はその内SXIの開発、試験を行った。特に、衛星搭載品であるFPCの信頼性を保証するため行った熱サイクル試験は申請者が主体的に行った。この試験により、FPCの熱衝撃に対する一定の保証を与えることができた。以上の成果は、研究会等で発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、超新星残骸G359.1-0.5が過電離プラズマであることを発見し、初めて超新星残骸における過電離プラズマのフルバンドフィットに成功した。これは、今後行う過電離プラズマ超新星残骸の広域探査において主要な手法が確立したことを意味しており、今後の研究が期待される。また、並行して実施していたASTRO-H搭載のSXIのための種々の開発、試験も順調に進んでいる。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は過電離プラズマ超新星残骸の広域探査を引き続き行い、まだまだ発見数の少ない過電離プラズマの特徴を洗い出す。加えて、IC 443等の超新星残骸を空間分解することにより、過電離プラズマの生成メカニズムを制限し、宇宙線加速への寄与を定量化する。また、これらの研究にはX線の観測だけでなく、電波、赤外、ガンマ線など他波長との観測も視野に入れながら行う。これらをもとに、翌年度に過電離プラズマ形成メカニズムと宇宙線加速機構の統一的描像を打ち立て、博士論文とする。また、並行して次期X線天文衛星ASTRO-Hに搭載されるSXIの開発、試験を行っていく。
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Research Products
(8 results)