2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J00911
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
煙山 紀子 (鈴木 紀子) 筑波大学, 医学医療系, 特別研究員(PD)
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Keywords | Elovl-6 / 脂肪酸組成 / 行動解析 / 脳 / 食餌嗜好性 / 高ショ糖食 |
Research Abstract |
食習慣は肥満、生活習慣病と深く関わるが、食行動の是正には未だ課題が多い。肥満状態においては、多彩な内因性生理活性因子の制御機能不全が起こるが、従来身体の構成やエネルギー源として利用されると考えられていた栄養成分、特に脂質は、栄養シグナルとして直接あるいは間接的に細胞機能の制御を繊細に行っている可能性があることがわかってきた。組織中の脂肪酸組成は食事中の脂質を反映するため、新たなエビデンスに立脚した食事の提案につながると期待される。 Elovl-6は脂肪酸伸長酵素ファミリーの一つであり、生体内で炭素数16から18への鎖長反応を担っている。全身Elovl-6欠損マウスでは肝臓の脂肪酸組成の変化が起こり、高脂肪食の負荷により野生型マウスと同様に肥満・脂肪肝を呈するが、それらの解消に依存しないインスリン抵抗性改善が示されている。また、脳においても脂肪酸組成の変化が起こることが確認されている。 Elovl6欠損マウスを用いて摂食調節機構におけるElovl6の役割について食行動解析を行った。普通食、高ショ糖食(ショ糖70%、脂質0%、蛋白質20%)、高脂肪食(炭水化物28%、脂質35%、蛋白質26%)を単独または選択条件で与え、その摂食量を経時的に観察した。野生型と比較して、Elovl6欠損マウスでは、普通食および高脂肪食の摂食量は変わらなかったが、高ショ糖食の摂食量が有意に増加した。 普通食と高ショ糖食を選択条件で与えた場合、総摂食量は野生型とElov16欠損マウスに差はないが、Elovl6欠損マウスは高ショ糖食をより多く摂食し、普通食の摂食量が減少した。したがって、Elovl6欠損による脂肪酸組成の変化は、恒常性維持のための摂食には影響せず、ショ糖の嗜好性に基づいた摂食に影響をおよぼす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
摂食行動量同時測定システムを用いて、高糖質食、高脂肪食を同時に与えて嗜好性を検討し、食行動を詳細に検討したところ、高ショ糖食を選択的に好んで摂取していた。これらの結果より、Elov16欠損による脂肪酸組成の変化は、恒常性維持のための摂食には影響せず、ショ糖の嗜好性に基づいた摂食に影響をおよぼす可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
Elov1-6欠損マウスの食行動変容メカニズム、代謝制御の解明を行う。 Elov1-6欠損マウスにおける糖質、脂肪への嗜好性を詳細に検討する。経路の検討として脳室内および全身への薬剤あるいは特定の脂肪酸および代謝産物投与による嗜好性の変動を確認する。摂食行動に関わるとされる視床下部諸核のさまざまなモノアミン系、ペプチド系アミノ酸の代謝変化に関する検討を行うため、肝臓などで従来検討している遺伝子発現、脂肪酸代謝、シグナル経路の検討について、脳サンプルについても系を確立して、神経シグナルと合わせて検討する。
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Research Products
(1 results)