2011 Fiscal Year Annual Research Report
植物の強光適応を支える細胞核定位運動―その分子機構と生理学的役割―
Project/Area Number |
11J01024
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩渕 功誠 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 細胞核 / 光定位運動 / 青色光 / 紫外線 |
Research Abstract |
シロイヌナズナの葉の細胞核は,光に応答して細胞内で存在場所を変える"光定位運動"を示す.しかし,核がなぜ動くのかについては分かっていない.本年度は,核光定位運動の生理学的役割の解明を目指した.核は強い光に曝されると位置を変えることや,入射光に対して平行な垂層壁に定位することなどから,申請者は,核は過剰光から逃れるために動くのではないかと予想した.地上に到達する太陽光には紫外線が含まれており,特にUV-B(280-320nm)と呼ばれる紫外線がDNAに重大な損傷をもたらすことが知られている.そこで本研究では,細胞核の位置とUV-BによるDNA損傷との関係について調べた. シロイヌナズナの葉の核は暗黒下で細胞底面中央に位置しているが,強い光(青色光,100μmol m^<-2>S^<-1>)を照射すると1-3時間ほどで垂層壁に定位する.この時の核の最大受光面積を測定したところ,垂層壁に定位した核の面積は細胞底面中央に定位した核の面積に比べて有意に小さかった.そこで,垂層壁に定位した核を持つ葉と細胞底面に定位した核を持つ葉にそれぞれUV-Bを照射し,DNAに生じる傷(シクロブタン型ピリミジンダイマー,CPD)を免疫染色法により定量化したところ,垂層壁に定位した核を持つ葉では顕著なCPD量の減少が認められた.さらに,核が常に垂層壁に定位したシロイヌナズナ突然変異体を用いて同様の実験を行った.変異体にUV-Bを照射し,生じるCPDをELISA法およびリアルタイムPCR法により定量化したところ,CPD量は野生型よりも少なかった. 以上の結果より,核光定位運動は紫外線照射により生じるDNA損傷を抑制する働きを持つことが明らかになった.動物とは異なり,植物は紫外線に曝されてもその場から逃げることはできない.そこで植物は,細胞内で核を動かすという手段を使って紫外線から身を守っているのではないかと申請者は考えている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り,平成23年度は紫外線によるDNA損傷に注目した解析を行い,植物の新たな紫外線耐性機構を明らかにできた.現在,得られた成果を論文としてまとめており,当初の計画通り研究は順調に進んでいる.
|
Strategy for Future Research Activity |
計画通り研究を進める予定である.
|