2012 Fiscal Year Annual Research Report
連鎖解析による食事性高コレステロール血症の性差原因遺伝子の同定
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11J01071
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 愛健 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ExHC / 食事コレステロール / 連鎖解析 / インスリン抵抗性 |
Research Abstract |
本研究の目的は食事性高コレステロール血症モデルラットであるExHCラットを用いて、食事コレステロールに応答し、血清コレステロール濃度を制御している雌特異的な遺伝子を同定することにある。昨年度に引き続き、雌ラットのみを用いたポジショナルクローニング法によってQTL領域を限局化し、原因遺伝子の探索を行った。ExHCラットの雌特異的食事性高コレステロール血症原因領域(Dihc1領域)のうちさまざまな領域を、交配によってBNラットのゲノムに組み換えたISCLラットを4系統作製し、コレステロール食摂食後の血清総コレステロール濃度の変化を調べた。 その結果、6週齢における原因領域を約9Mbpの領域に限局し、領域内の候補遺伝子数を94に限定した。一方で、あるISCLラットにおいて血清総コレステロール濃度が6週齢では減少するが、10週齢ではExHCラットと同等まで増加するという結果を得た。これは、6週齢において血清総コレステロール濃度を規定する原因遺伝子と10週齢における原因遺伝子が異なっている可能性を示すものである。よって、この結果から、6週齢における原因領域とは別に、新たに7.4Mbpの領域を10週齢における原因領域(候補遺伝子数:96)とした。 また、ExHCラットにおける食事性高コレステロール血症発症のメカニズムを明らかとするため、先に原因遺伝子として同定したSmek2が糖新生の制御に関与するという知見に基づき、ExHCラットにおける糖代謝の評価を行った。 起源系統であるSDラットと比較して、ExHCラットの血糖値(9時間絶食時)有意に増加し、血清インスリン濃度がExHCラットにおいて増加傾向を示した(P-0.06)。この時のインスリン抵抗性の指標であるHOMA-IR値もExHCラットで有意に上昇した。これらの結果より、ExHCラットはインスリン感受性が低下しており、糖代謝に異常をきたしている可能性があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットの妊娠や産児数はコントロールできないため、交配による限局のスピードはラット側に依存する部分が大きい。そのため、ExHCラット雌特異的原因遺伝子座Dihc1領域の限局が進まない可能性があったが、今回さらなる限局に至ることができた。また、本来の目的である原因遺伝子とは別に、性成熟後のコレステロール代謝を制御する遺伝子が存在する可能性を示せたため、『おおむね順調に進展している』と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
コレステロール食摂食後の雌性ExHCラットおよびBNラット肝臓より採取したRNAをサンプルとして遺伝子の発現解析を行い、候補遺伝子の系統間での発現量の変化を調査する。発現に『変化あり』となった遺伝子について、変異情報の収集と合わせて解析を行うことで、原因遺伝子の同定を進める計画である。
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