2011 Fiscal Year Annual Research Report
免疫抑制受容体の機能阻害による牛白血病治療法または防御法に関する研究
Project/Area Number |
11J01093
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
池渕 良洋 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 牛白血病ウイルス感染症 / PD-1 / PD-L1 / 免疫抑制 / 免疫疲弊化 / 慢性感染症 / 腫瘍疾患 |
Research Abstract |
Programmed death-1(PD-1)は病原体の排除に重要な免疫細胞であるT細胞に主に発現する免疫抑制受容体で、リガンドであるProgrammed death-ligand1(PD-L1)が結合することで抑制性シグナルが送られて、T細胞は疲弊化する。しかし、PD-1とPD-L1の結合を抗体などにより阻害することで、T細胞の再活性化が起こり病原体に対する強い免疫反応が誘導される。 本研究では、家畜の難治性疾患である牛白血病ウイルス(BLV)感染症をモデル疾患としてウシPD-1/PD-L1の解析を行なってきた。本年度では、PD-1の発現解析、機能解析を行うために「抗ウシPD-1抗体と組換えウシPD-1の作製ならびにin vitroにおける免疫活性化能の評価」および「BLV感染牛におけるPD-1発現解析」を目標と定めた。その結果、抗ウシPD-1抗体および組換えウシPD-1の作製に成功した。抗ウシPD-1抗体に関してはIFN-gamma産生やリンパ球増殖の増加など免疫活性化能を有することをin vitroにおいて確認した。この抗体は今後の獣医免疫学の研究に貢献するだけではなく、免疫抑制が引き起こされる難治性疾病の新規治療法に応用される可能性が高く、非常に意義のあるものである。しかし、組換えウシPD-1に関しては、免疫活性を減少する働きを持つことが明らかになった。これは本研究の仮説およびこれまでの通説とは全く逆の結果である。今後このメカニズムついて詳細に解析する。PD-1発現解析も順調に進展した。予想された通り、一部のT細胞にPD-1が発現していることを確認した。これはBLV感染牛において、一部のT細胞が疲弊化の状態である可能性を示している。さらにB細胞にもPD-1が発現していることを確認した。今後はPD-1発現TおよびB細胞の免疫機能が低下しているか検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は抗ウシPD-1抗体と組換えウシPD-1の作製に成功し、in vitroにおける免疫活性化能の評価も行った。抗ウシPD-1抗体で確認された免疫活性化能と違い、組換えウシPD-1には免疫抑制能を有することが明らかとなり、今後の研究課題の幅が広がった。また、BLV感染牛におけるPD-1発現解析も行った結果、T細胞だけではなく、B細胞にもPD-1発現が認められ、予想を超えた結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
抗ウシPD-1抗体は免疫活性化能を有していると思われるので、計画通り詳細なメカニズムについて解析を進める。しかし、組換えウシPD-1については免疫抑制能を有することが問題である。「PD-L1がPD-1以外に受容体を持つ」可能性や「PD-L2という別のリガンドの関与」、「PD-L1/L2から細胞内に抑制性シグナルが入る」などの通説に沿わない仮説も検証しようと考えている。 また、PD-1発現T細胞が免疫抑制状態か否かを検討する。計画の変更点としては、B細胞にもPD-1発現が認められたので、PD-1がB細胞にも免疫抑制を引き起こすか否か検討する。
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Research Products
(5 results)