2012 Fiscal Year Annual Research Report
免疫抑制受容体の機能阻害による牛白血病治療または防御法に関する研究
Project/Area Number |
11J01093
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
池渕 良洋 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | PD-1 / PD-L1 / 牛白血病ウイルス / 免疫抑制 / モノクローナル抗体 / 免疫賦活 |
Research Abstract |
本研究では、家畜に免疫抑制を誘導する牛白血病ウイルス(BLV)感染症に対する新規制御法の開発を目的として、Programmed death-1(PD-1)とProgrammed death-ligand 1(PD-L1)の免疫抑制経路の阻害薬の開発を進めてきた。 昨年度樹立した抗PD-1抗体のin vivoでの機能評価の前に、in vitroでの詳細な機能解析を行った。抗PD-1抗体を添加して培養したリンパ球では、抗ウイルス性サイトカインIFN-gammaの産生能と細胞増殖能が増加した。また、BLV-gp51蛋白質発現減少やアポトーシスB細胞の増加などが確認された。仮説通り、抗PD-1抗体が免疫反応を活性化し、BLVの増殖を抑制したことが明らかになった。 以上のin vitro実験の結果を受けて、抗PD-1抗体のin vivoでの機能評価を行った。ハイブリドーマをマウスに投与して抗体を大量生産し、20mgの抗PD-1抗体を得た。この抗体をBLV感染牛(1.8歳、350kg)に投与した結果、BLV-gp51発現B細胞数やIFN-gamma産生能に変化が見られなかった。この予想に反する結果は、投与する抗体量が少ないことが原因であると考えている。現在哺乳類細胞による抗PD-1抗体の大量発現系を開発中である。 一方、組換えPD-1の免疫抑制機構の解明を行った。組換えPD-1添加により、B細胞の細胞死が有意に増加することを明らかにした。B細胞を除いたリンパ球では組換えPD-1による免疫抑制反応が消失することから、B細胞の細胞死が免疫抑制の原因であると考えられる。PD-L1はB細胞で主に発現していることから、組換えPD-1はPD-L1に結合することで、PD-L1発現細胞のアポトーシスを誘導している可能性が考えられ、現在PD-L1強制発現細胞を用いた解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vitro解析の結果とはいえ、抗PD-1抗体の免疫活性化能だけではなく、BLV増殖抑制能を証明したことは非常に大きな成果と言える。in vivoにおける機能が観察されなかったことは、投与する抗体量を増加することで、解決できる問題である。 また、本年度の研究により、組換えPD-1の免疫抑制能が、PD-L1発現細胞のアポトーシスシグナルに起因する可能性を発見した。PD-L1からの細胞内シグナルについては、未だ未解明な点が多く、これらのデータは非常に興味深い結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
哺乳類細胞による抗PD-1抗体の大量生産系の開発を進める。in vivoでの機能評価のためには、最低1グラム以上の組換え抗体を作製しなければならない。現在、遺伝子増幅法を用いて生産量を増加させており、来年度中には充分な量の抗体を用いた評価が可能である。 また、組換えPD-1を投与した場合のPD-L1強制発現細胞およびPD-L1発現BLV感染細胞のアポトーシス反応や、それに関するシグナル解析を行う。
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Research Products
(2 results)