2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J01121
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
蒲谷 祐一 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 3次元多様体 / 双曲多様体 / 高次タイヒミュラー空間 |
Research Abstract |
私の研究対象は3次元多様体のトポロジーで、トポロジーという柔らかい'構造を幾何構造という固い構造を通じて調べている。幾何構造は基本群の表現で記述できるので、そのような表現全体を調べる事が重要になる。また2次元多様体(曲面)の基本群の表現も重要で、これは複素解析や代数幾何などの分野でも重要な研究対象となっている。 昨年度は曲面の基本群のPSL(2,C)表現の空間の座標系に関する論文を執筆した。昨年度末から今年度にかけてはこれを高次元の表現(PSL(n,C)表現)に拡張する研究を行った。これは近年活発に研究されている高次タイヒミュラー空間と関連する。具体的には2次元の表現におけるFenchel-Nielsen座標をn次元の場合に拡張した。昨年度の論文の手法にFock-Goncharovによって導入された座標を適用する事で初等的で自然な座標系が構成出来たと思う。この研究を通して高次タイヒミュラー空間やその空間への写像類群の作用などに興味を持つようになり、8月にイリノイ大学で行われた研究集会に参加し様々な研究者と交流できた。PSL(n,C)は様々な幾何に関連したリー群を含むので,その場合の幾何学的な意味について現在研究を進めているところである。この研究においてコンピュータを用いた展開写像の可視化を行った(一部を京大数理研の講究録として出版予定)。 一方で2012年はAgolがThurstonの一連の予想を解決するという、3次元多様体論にとって激変の年であった。この最近の潮流に関して2日間の解説を行い、講演のノートを作成した。このノートは私のウェブサイトから利用可能である。まだ世界的にも解説が少ない状況で日本語でノートを残せた意義は大きいと思う。自分の研究対象に照らし合わせても、表現の空間の極限として現れる非正曲率空間の幾何の手法が学べた事は大きかった。 その他、以前執筆した論文の出版のための校訂を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高次の表現について結果を出し、それに関わる発表も行ったという意味では研究が進んだ。ただ関連した研究も続いていたため、論文にするタイミングが遅れてしまった。研究対象が増えているという状況であるので必ずしもマイナスではないが、論文の数という点で不満が残った。またコンピュータを用いた研究も行っていたが進捗状況は良くなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っている高次元の表現の空間に関連した研究を続けて行く予定である。曲面群だけでなく3次元多様体の基本群に関してもこのような理論が2011年末頃から現れ始めている。これらの研究の手法は私の得意とする物であり、私が昔に行った研究結果もこの枠組みで出来ると考えているので実現したい。2012年は3次元多様体論にとって大きな問題が解決した年であった。今後は基本群の表現の空間の力学系の研究が重要になると思っている。このような流れを見据えて研究を進めていきたい。
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