2011 Fiscal Year Annual Research Report
グリオブラストーマ幹細胞におけるWnt5a/Rorシグナルの機能の解明
Project/Area Number |
11J01138
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
土井 亮助 神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Wntシグナル / 幹細胞性 / 腫瘍 / 脳 / 神経 / グリオブラストーマ / がん幹細胞 / 低酸素 |
Research Abstract |
本研究では、グリオブラストーマ幹細胞の幹細胞性と機能制御におけるWnt5a/Rorシグナルの役割を解明することを目的とし、主に以下の4つの点に着目して研究を行っている。1)グリオブラストーマ幹細胞におけるRor1,Ror2およびWnt5aの発現解析、2)グリオブラストーマ幹細胞の幹細胞性制御におけるWnt5a/Rorシグナルの役割の解明、3)Wnt5a/Rorシグナルによるグリオブラストーマ幹細胞の幹細胞性制御におけるHIFsの関与の検討、4)グリオブラストーマの進展におけるWnt5a/Rorシグナルの関与の検討 初年23年度は、研究計画に従い1),2)について主に解析を行った。 1)グリオブラストーマ幹細胞におけるRor1,Ror2およびWnt5aの発現解析 Neurosphere形成法により3種のグリオブラストーマ細胞における各遺伝子の発現比較を行ったところ、接着培養と比較して幹細胞マーカーであるCD133およびMsi-1のmRNAの発現上昇が認められた。この結果から、Neurosphere形成によりグリオブラストーマ幹細胞を選択的に増殖していることが示唆された。この条件下で、Ror1、Ror2およびWnt5aの発現を解析した結果、Ror2遺伝子の発現誘導が認められた。 次に、幹細胞マーカーである抗CD133抗体によるセルソーターを用いた幹細胞分離を試みた。上記3つの細胞株では陽性細胞が極めて少ないため、Neurosphere形成法を併用し、かつ別種のグリオーマ細胞株を取得し解析を試みたが、ほとんど変化がなかった。そこで、他のがん細胞株を取得して、現在解析を進行している。 2)グリオブラストーマ幹細胞の幹細胞性制御におけるWnt5a/Rorシグナルの役割の解明 Neurosphere形成法により3種のグリオブラストーマ細胞株の自己複製能を検討した。その結果、先行研究と同様の高いsphere形成能が明らかとなった。この条件下で、RNA干渉法によるRor1、Ror2およびWnt5a遺伝子発現抑制を行ったところ、sphere形成能の有意な減少が認められた。これらの結果から、Wnt5a/Rorシグナルはグリオブラストーマ幹細胞の幹細胞性制御に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Wnt5a/Rorシグナルの遮断によるグリオブラストーマ幹細胞の自己複製能への影響が確認されたため、初年度計画の遺伝子発現解析および幹細胞性制御への関与の検討については、おおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最大の課題は、幹細胞の単離である。グリオブラストーマ幹細胞の単離方法として、本実験ではNeurosphere形成法と標識抗体によるFACSを試みているが、後者ではうまくいっていない。前者の方法は、幹細胞の性質による単離であり細胞の表現型を指標にしている点が利点といえる一方で、後者とは異なり細胞集団の均一性は低い。今後よりin viroなどより高い精度が求められる実験系においては、後者の方法を用いる必要があると考えている。そこで、現在グリオブラストーマとは異なる他の組織由来のガン細胞株を用いて幹細胞マーカーによるがん幹細胞の単離を行なっており、実際にがん幹細胞と非がん幹細胞におけるWnt5a/Rorシグナルの機能を解析中である。この実験結果をグリオブラストーマ細胞にフィードバックすることにより、FACSにおける高精度のがん幹細胞の単離が可能となると考えている。
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