2011 Fiscal Year Annual Research Report
メンタルヘルスにおける医療経済分析―社会・経済構造による影響に着目して―
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11J01145
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
牛 冰 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 主観的健康感 / 財政管理 / 意思決定権の強さ |
Research Abstract |
本年度は、主に家計経済における意思決定が主観的健康感に与える影響をテーマとした研究を実施した。 本研究の目的は、既婚女性の家計経済における意思決定、特に収入の管理と配分に注目し、財政管理タイプの違いが、女性の主観的健康感に与える影響を明らかにすることである。 まず、家計の財政管理(familybudgeting)のプロセスへの女性の参与度をはかり、意思決定権の強さ(decision-makingpower)として定義する。具体的には、以下の4つの基準を設ける。女性が、(1)収入を持つかどうか、(2)家計全体の収入を集められるかどうか、(3)集められた収入を管理できるかどうか、(4)自分自身に収入の配分をあてられるかどうか、である。以上の4つの基準のうち、すべての基準が満たされた場合、既婚女性が「強い」意思決定権を持つと定義する。3つの基準が満たされた場合、「普通」の意思決定権として、2つ以下満たされた場合は、「弱い」意思決定権として定義する。次に、「消費生活に関するパネル調査」の個票データを用いて計量分析を行う。25歳から45歳までの既婚女性に着目し、2004年のデータから1,306人のサンプルを得た。家計における意思決定の内生性を考慮し、Bivariate ordered probitモデルを用いて推定を行う。操作変数として、夫婦の年齢差、女性の母親の教育レベル、夫婦の親の収入の差と出生順などの変数を用いる。 研究の結果として、財政管理における意思決定権が強ければ強いほど、既婚女性がより良い主観的健康感と主観的若さ(同年齢比)の結果を報告する傾向がある。また、女性の就労状況(employment status)、教育レベル(educational attainment)と居住地(residenti alarea)なども主観的健康感に影響を与えることが分かった。本研究は、意思決定権の強さが健康に与える影響を明らかにする実証分析の一つとして、意思決定の新しいメジャーの定義と使用や内生性を考慮した推定方法などにおいて文献に貢献できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、今年度の研究計画通り、1)データの収集と整備を行い、2)計量経済学的手法により分析し、論文をまとめ、3)海外及び国内の学会で発表し、4)現在国際ジャーナルに投稿している。以上より、この研究は予定通りに進捗していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、「研究目的」に記載された残りの二つの研究テーマについて計画通りに行う予定である。6月までに研究テーマ(2)の研究内容をまとめ、論文を執筆し、7月の国際学会で発表する予定である。研究テーマ(3)について、すでにデータの入手と整備を終え、8月から分析を行った上で、論文を執筆する予定である。
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