2011 Fiscal Year Annual Research Report
糖類の代謝経路を改変した酵母による有用物質生産系の確立
Project/Area Number |
11J01155
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松沢 智彦 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 分裂酵母 / グルコース抑制 / グリセロール / ガラクトース / 不均衡変異導入法 |
Research Abstract |
これまでの研究から、転写抑制因子Scr1がグルコース抑制に、また、プロテインキナーゼSsp2がグルコース抑制の解除に必要であることが明らかになっている。Scr1のリン酸化をウエスタン解析によって調べた結果、Scr1はグルコース飢餓条件下においてSsp2依存的にリン酸化されており、また、Scr1はリン酸化されることによって核外へ排出され、Scr1によるgld1^+やinv1^+などの発現抑制が解除されることが明らかになった。 分裂酵母のグリセロールの資化がエタノールによって促進される機構を解明するため、グリセロールの資化に必須なグリセロールデヒドロゲナーゼをコードするgld1^+遺伝子の発現に注目して実験を行った。グリセロールはgld1^+の発現を誘導しないが、「グルコース飢餓」「エタノール」この2つの条件が揃うとgld1^+の発現が誘導されること、また、この発現誘導には転写活性化因子Atf1が必須であることを明らかにした。これに加え、エタノール以外にも1-プロパノールでもgld1^+の発現が誘導されるが、メタノールや他のアルコールでは行われないことが明らかになり、分裂酵母にはエタノールや1-プロパノールを特異的に認識し、転写制御を行う機構の存在が示唆された。 分裂酵母野性株はガラクトースを資化できないが、不均衡変異導入法によってガラクトースを資化できる変異株を取得した。この変異株(FG2-8株)のガラクトース資化を可能にしている変異は劣性変異に由来していることが明らかになっているので、FG2-8株のガラクトース資化を抑圧する遺伝子の探索を行った。マイクロアレイ解析から、FG2-8株で有意に発現の低下している転写因子をコードする遺伝子をFG2-8株において多コピーベクターで発現させた結果、FG2-8株のガラクトース資化能を抑圧する遺伝子の取得に成功した。この遺伝子をrog1^+(Repressor of Gal genes)と命名し、解析を行った。多コピーベクターでrog1^+を発現させた株ではGal遺伝子(gal1^+,gal7^+,gal10^+)の発現抑制が見られ、本遺伝子がGal遺伝子の抑制に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
分裂酵母のグルコース飢餓応答機構を明らかにでき、また、エタノールや1-プロパノールによって発現誘導が行われるというこれまでに報告の無い知見を得ることができ、これらの内容を論文発表(Eukaryotic Cell誌及びApplied Microbiology and Biotechnology誌)することができた。ガラクトース資化関連遺伝子の発現を抑制している新奇転写因子Rog1を同定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
分裂酵母のエタノール・1-プロパノールの認識機構の解明を行う。エタノール・1-プロパノールを添加してもgld1^+の発現が誘導されない変異株を取得し、その変異株を相補する遺伝子の探索を行う。これにより、これまでに報告されていない、アルコールによる糖類代謝経路の制御機構を明らかにし、グリセロール等の廃棄系バイオマスからの有用物質生産系の構築を行う。新奇転写因子Rog1の機能解析(局在観察、破壊株の詳細な表現型の観察)を行う。また、FG2-8株のガラクトース資化能は複数の劣性変異に由来することが明らかになっているので、Rog1以外のガラクトース資化関連遺伝子の抑制に関与している遺伝子(FG2-8株のガラクトース資化能を抑圧する遺伝子)をゲノムライブラリーを用いたスクリーニングから探索する。
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Research Products
(14 results)