2011 Fiscal Year Annual Research Report
DNAポリメラーゼλ阻害を介した食品成分による抗炎症作用機序の解明
Project/Area Number |
11J01261
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西田 真之 神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | DNAポリメラーゼλ / NF-κB / 抗炎症作用 |
Research Abstract |
これまでの研究で、クルクミンの誘導体であるモノアセチルクルクミンが修復型のDNAポリメラーゼλを選択的に阻害し、抗炎症作用を有することを明らかにした。そこで、LPS(リボ多糖)で刺激を与えたマウスマクロファージ系細胞株RAW264.7細胞に対するDNAポリメラーゼλ選択的阻害物質の抗炎症作用の機序を検討した。その結果、RAW264.7細胞においてモノアセチルクルクミンは、炎症性サイトカインであるTNFαの産生抑制と炎症誘発性転写因子であるNF-κBの核内移行を抑制することを明らかにした。NF-κBはp65とp50のタンパク質で構成され、通常は不活化因子であるIκBと結合して細胞質に存在しており、炎症刺激が加わると、IκBはリン酸化を受け分解し、そしてNF-κBのp65はリン酸化され、核内へ移行する。このシグナルに対するモノアセチルクルクミンの影響を検討したところ、モノアセチルクルクミンは、IκBのリン酸化とNF-κBのp65のリン酸化を抑制することを明らかにした。モノアセチルクルクミンは、LPS刺激によるIκBのリン酸化を抑制することで抗炎症作用を発揮することが示唆された。 次に、DNAポリメラーゼλと炎症反応との関係性について検討を行った。RAW264.7細胞にLPSで刺激を与え、DNAポリメラーゼλ発現の時間依存的変動をreal-time PCRやwestern blottingを用いて検討した。LPS刺激後、24時間でDNAポリメラーゼλのmRNA、タンパク質発現がともに増加することを明らかにした。この結果から、DNAポリメラーゼλが炎症反応に関係する可能性が示唆された。炎症反応で増加するDNAポリメラーゼλ発現に対するモノアセチルクルクミンの影響を検討した。モノアセチルクルクミンは、炎症惹起によるDNAポリメラーゼλのmRNA、タンパク質発現をともに抑制することを明らかにした。このことから、モノアセチルクルクミンは、DNAポリメラーゼλ発現を抑制することで抗炎症作用を発揮している可能性が示唆された。現在、siRNAを用いてDNAポリメラーゼλ発現を低下させた条件下での炎症反応の変化を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNAポリメラーゼλ選択的阻害物質であるモノアセチルクルクミンが抗炎症作用を発揮することを明らかにした。さらに、LPS刺激による炎症反応で、DNAポリメラーゼλのmRNA発現が有意に増加し、タンパク質発現も増加が認められた。そして、炎症反応によるDNAポリメラーゼλ発現増加をモノアセチルクルクミンが抑制することを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
siRNAを用いて、培養細胞(マウスマクロファージ系細胞株RAW264.7細胞やヒト腸管上皮細胞株Caco-2細胞)のDNAポリメラーゼλ発現を低下させ、その条件下で炎症反応のシグナル伝達がどのように変化するかを検討することで、DNAポリメラーゼλの炎症反応への関与の有無を明らかにする。また、マウス炎症疾患モデル(炎症性腸疾患モデルであるデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性腸炎など)を用いて、DNAポリメラーゼλの炎症疾患発症への関与をwestern blotting、real-time PCR、DNAポリメラーゼ酵素活性測定により検討する。 さらに、マウス炎症疾患モデルにDNAポリメラーゼλ選択的阻害物質を投与し、抗炎症作用の有無を確認する。そして、DNAポリメラーゼλ選択的阻害物質の抗炎症作用がDNAポリメラーゼλの阻害によるものであることを明らかにする。なお、研究成果は、学会や論文等で発表する。
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