2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J01274
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
塩田 陽一 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スピントロニクス / 磁気異方性 / 磁化反転 / 電圧制御 |
Research Abstract |
現在、メモリなどのエレクトロニクスデバイスにおいて待機電力・消費電力の低減が求められており、電界による磁化反転に関して様々な研究が進められています。本研究では、鉄コバルト合金を数原子層まで超薄膜化し、絶縁層を介して電圧を印加すると、界面に蓄積する電子によって電子軌道の占有状態が変調され、磁化の向きやすい方向(磁気異方性)を制御することが可能であることを利用し、超膜膜の鉄コバルト合金/絶縁層/参照用の厚い磁性層を有する磁気トンネル接合素子を作成し、電圧による磁気異方性の変化をトンネル磁気抵抗効果(二つの磁性層の磁化の相対角によって抵抗が変化する効果)による検出方法で評価を試みました。 まずは垂直磁場下での磁気抵抗曲線の測定結果から、電圧による磁気異方性変化量を定量的に評価しました。次にLLG方程式からマクロスピンモデルシミュレーションのプログラムを開発し、得られたパラメータを用いることで、どのような電圧を印加すれば磁化反転が起こるかを評価しました。 実験ではシミュレーションから得られた結果を参考にパルス電圧を印加し、電圧を印加する毎に磁化反転が起こることを観測しました。さらにパルス幅を変化させることで、磁化の歳差運動による反転であることを観測しました。これはこれまで研究が行われている電流による磁化反転(スピン注入磁化反転)とはまったく異なる挙動で、電圧によって磁化反転が励起されたことがわかりました。 この方法は将来、メモリなどの低消費電力書き込みに向けて非常に有益な方法であるといえます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
博士後期課程進学当初から精力的に研究を行い、申請当初の計画では2年目で達成されるはずだった「電圧のみでの双方向磁化反転」に成功した。これらは英国雑誌の"Nature Materials"や新聞などにも取り上げられ、研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
電圧による磁化反転は磁化の歳差運動によって実現される。実験ではこの歳差運動を、パルス幅に対する反転確率の振動を観測することで確認を行った。しかし、反転確率では数百回の試行実験の平均によって観測しており、平均的な磁化の軌道しか推測できない。そこでオシロスコープを用いた磁化反転の実時間測定を行えば、反転過程を直接観測することができ、新しい知見を得ることができる。 また磁気異方性の電界制御を利用したもので、伝搬しているスピン波を操作できると考えられる。今後はこのテーマに関しても新たなデバイス作製、評価法などを確立してきたい。
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Research Products
(6 results)