2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J01274
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
塩田 陽一 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スピントロニクス / 磁気異方性 / 磁化反転 / 電圧制御 |
Research Abstract |
現在、メモリなどのエレクトロニクスデバイスにおいて待機電力・消費電力の低減が求められています。そこで本研究では、室温下で磁性材料に直接電圧を印加することによって磁化の方向を制御し新たなデバイス応用を目指し研究を行っています。 前年度において報告した通り、固定磁場下でパルス電圧印加のみによるダイナミック双方向磁化反転を実現することに成功した。しかし、成功した素子は抵抗値が小さく電流駆動型に比べて良い省エネルギー特性を示すには不十分であった。そこで、同様の素子構造だが、MgOの膜厚を1.5nmから2.0nmにすることで抵抗値は40倍となった。このような素子においてもパルス電圧のみによる双方向磁化反転及びパルス幅に対する反転確率の振動を観測することに成功した。反転に必要な電圧はほぼ同程度だが、電圧を加えた際に流れる電流は1/10以下に低減されており、原理的には電流を必要としない磁化反転であることがわかる。消費電力に関しても、電流駆動型であるスピン注入磁化反転よりも1/60以下という特性を示すことに成功した。この結果は米国論文誌「Applied Physics Letters」に掲載された。 また電圧駆動型のスピン波制御素子の作成に向けて、まずスピン波伝搬特性の膜厚依存性を調べた。ここで強磁性層としてはFeを用い、平坦な膜を作製するために下地にAuを用いた。そこに2つのコプレーナ-ウェーブガイドを作製し、一つはスピン波の励起、もう一つはスピン波の検出として用いた。まずスピン波共鳴周波数は膜厚が薄くなるにつれて下がることがわかった。これは界面における垂直磁気異方性のためであることがわかった。次に伝搬特性を調べて、スピン波の群速度を求めたところ膜厚に対してほぼ線形に減少することがわかった。また5m以下の膜厚では伝搬しているスピン波を検出するのが非常に困難であった。電圧駆動型の素子を作成するには膜厚を薄くする必要があり、このままではスピン波の電圧駆動型素子を作製するのは困難ではないかと思われる。そこで今後は交換結合膜(強磁性/非磁性/強磁性)を用いて超薄膜強磁性層で共鳴を起こし、厚い膜に共鳴を励起させる方法などを検討していきたいと思う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の発展研究として「高抵抗トンネル磁気抵抗素子でのパルス電圧印加磁化反転」に成功し、米国論文雑誌"Applied Physics Letters"に掲載された。また新たなテーマとしてスピン波の電圧制御に関しても実験を行っており、おおむね順調に進展しているのではないかといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
スピン波の群速度の膜厚依存性を調べたところ超薄膜領域ではほぼスピン波の伝搬が難しいことがわかった。電圧制御を行うためには強磁性層の膜厚を数nmの膜厚にする必要があり、このままではスピン波の電圧制御は難しいのではないかと思われる。そこで、今後は超薄膜の強磁性層で共鳴を励起し、その共鳴を厚い強磁性層に伝搬させることでスピン波の励起が起こせる構造を考えたいと思う。そこで考えられるのは交換結合膜(強磁性/非磁性/強磁性)を用いる方法である。今後はシミュレーション、及び実験を同時に進行させていきたいと思う。
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Research Products
(7 results)