2011 Fiscal Year Annual Research Report
スピンエサキダイオードを用いたスピントランジスタの開発
Project/Area Number |
11J01277
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
塩貝 純一 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 強磁性半導体 / 電気的スピン注入 / 動的核スピン偏極 |
Research Abstract |
本研究では強磁性半導体(Ga,Mn)Asからn型非磁性半導体n-GaAsへの電気的電子スピン注入および電子スピンの電気的制御をすることで,横型のスピントランジスタの達成に向けて研究活動を遂行してきた.(Ga,Mn)Asは半導体であるため,非磁性半導体GaAs上にエピタキシャル成長でき,高品位なヘテロ構造を構築可能であり,高スピン偏極率を有した電子スピン注入が期待できる.本年度の研究成果である電気的電子スピン注入及び検出では,低温(T=4.0K)で57%のスピン注入率を達成した(研究成果(2)).これは従来の金属/半導体界面で行われた同様の研究よりもはるかに高い値である.今年度はこれに引き続き,注入電子スピンとn-GaAs中の核スピンが超微細相互作用をすることによって核スピンが偏極していることを明らかにした.我々はまず,面内磁場を掃引して測定した非局所スピンバルブ信号において,ゼロ磁場付近に磁化反転とは異なる信号が得られたことに着目した.Hanle効果(面直外部磁場による電子の歳差運動と緩和)の実験結果との組み合わせにより,ゼロ磁場では電子スピンが完全に緩和していることがわかり,電子が感じる核磁場による緩和であるという結論を得た.次に核スピンが偏極していることを確認するために,核磁気共鳴(NMR)の実験を行った.核スピンが偏極している場合,共鳴時にはその偏極が壊れるために電子スピンが感じる核磁場が変調され,共鳴時と非共鳴時では異なった非局所電圧が測定できるはずである.NMRの実験では,いくつかの共鳴ピーク構造が観測でき,共鳴周波数が外部磁場に対して線形に変化することで,核スピンが偏極していることを明らかにし,さらに磁気回転比から^<75>As,^<69>Ga,^<71>Gaのすべての核が偏極していることを明らかにした.このような核スピンを効果的に用いることで,第3端子で核磁場のON/OFFを切り替えることができ,チャネル中の電子の歳差運動を制御可能である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該特別研究員は昨年発生した東日本大震災に伴う,所属研究室の甚大な被害による研究活動停滞にもかかわらず,出向先の海外の他研究機関において上記研究課題を着実に遂行し,スピンエサキダイオードから非磁性半導体GaAs中への偏極電子スピンの電気的注入及び検出に成功し,さらに電子スピンと核スピンとの相互作用である超微細相互作用によってGaAs中の核スピンが動的に偏極していることを様々な異なった手法を用いた実験で明らかにしたため.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では非磁性半導体への電気的スピン偏極電子の注入に成功し,核スピンが偏極していることが明らかになった.今後はこの核スピンの方向制御をするため,パルス共鳴磁場によるRabi振動の観測を試みる.Rabi振動の観測には素子中に均一で強い交流磁場を発生させる必要があり,このために交流の増幅器を利用する,もしくは微細加工により素子に近接させたウェーブガイドを作製する予定である.核スピンの方向制御が可能になれば,核磁場による電子スピンが可能になるばかりか,核スピンを用いた量子情報素子が電気的手法により実現可能である.
|
Research Products
(2 results)