2012 Fiscal Year Annual Research Report
スピンエサキダイオード構造を用いたスピントランジスタの開発
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11J01277
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
塩貝 純一 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 電気的スピン注入 / 強磁性半導体 / 動的核スピン偏極 / 3端子Hanle効果 / スピンエサキダイオード / 半導体スピントロニクス |
Research Abstract |
強磁性半導体(Ga,Mn)Asから非磁性半導体n-GaAsへはスピンエサキ構造のバンド間トンネル現象を用いることで効率よくスピン偏極電子を注入することが可能である.我々はこれまでn-GaAs上に高ドープのn-GaAs及び(Ga,Mn)Asを全てエピタキシャル成長することで高品位スピン注入界面を作製し,50%を超えるスピン注入効率を有するスピン注入デバイスに成功した. H24年度はn-GaAsへ高スピン偏極率の電子スピンを注入することで動的に核スピンを偏極することに成功した.また,3端子Hanle効果と4端子非局所Hanle効果の比較実験を行い3端子Hanle効果の異常信号の起源を解明した, 1.純スピン流による動的核スピン偏極 GaAs中に注入した電子スピンはスピン緩和する際に格子の核スピンと超微細相互作用をすることで動的に核スピンを偏極する.本研究では電子線リソグラフィーを用いた微細加工技術を利用して横型スピン注入デバイスを作製し,半導体中に電荷の流れを伴わない純スピン流を生成し,その緩和現象を利用して核スピン偏極に成功した.固体中の電子スピンは外部磁場と核磁場の和を実効磁場として感じ,磁場周りに歳差運動することで緩和する.逆に,核磁場と相殺するように外部磁場を印加すると,実効磁場はゼロとなり電子スピン緩和は抑制される.2軸の独立した超伝導マグネットを精度良く制御することで,電子が感じる実効磁場をゼロにする条件を確立し,純スピン流によって偏極した核スピンの偏極率を定量的に求めることができた. 2.3端子Hanle効果の起源解明 3端子Hanle効果に関しては,これまでIV族及びIII-V族半導体へのスピン注入の検出手法として用いられている手法であるが,その信号強度が従来のスピンドリフト拡散モデルでは説明できないほど大きな値が報告されている.我々はスピンエサキダイオードを用いたスピン注入デバイスで3端子及び4端子非局所Hanle効果の比較実験を行い,それぞれのバイアス特性とスピンエサキ接合の電流電圧特性を詳細に調べることで,トンネル接合に存在する禁制帯内の不純物準位にトラップされた電子スピンが3端子Hanle効果の増幅効果の原因であることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であるスピントランジスタの開発に向けて研究を行っていたが,3端子Hanle効果の異常信号や動的核スピン偏極などのスピン注入に付随した新規現象が観測され,それぞれに関して詳細に研究を進めていくことで,理解が深まり,結果的にスピントランジスタの開発に寄与する成果が挙げられたため.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は3端子Hanle効果の信号異常が禁制帯内のトラップ準位が原因であることを明らかにした.次年度は異常信号をより定量的に調べるため,スピンエサキダイオード接合のドーピング濃度を変えた素子を作製し,禁制帯内のトラップ準位が異常信号にどのような変化を与えるかを調べる.
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Research Products
(17 results)