2011 Fiscal Year Annual Research Report
分子生物学的基盤に基づいた食品成分の抗アレルギー性評価とその作用機序の研究
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11J01303
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山下 修矢 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フラボン / イソフラボン / 標的遺伝子 / 抗アレルギー作用 / 抗がん作用 / UBB / PAPD5 |
Research Abstract |
フラボン類の抗アレルギー作用の発現に関わる遺伝子の同定を目的とし、その抗がん作用を指標として16種類の候補遺伝子をスクリーニングした。マウスメラノーマ細胞株B16においてRNA干渉法により各々の候補遺伝子を一過性でノックダウンし、フラボン類の抗がん作用における遺伝子の関与について検討した。その結果、Ubiquitin B(UBB)をノックダウンした場合にフラボン類の作用が著しく減弱したことから、本遺伝子がフラボン類の抗がん作用に重要であることが示された。また、B16細胞に対しフラボン類はSubG1を誘導し、細胞死を誘導すること、Aktのリン酸化レベルを低下させること、また、これらの作用にUBBが関与することを見出した。UBBはフラボン類の抗がん作用発現の入り口に関わることが示され、抗アレルギー作用等の他の生理作用に関与することが期待される。 一方、フラボン類の幾何異性体であるイソフラボン類において、好塩基球における高親和性IgE受容体の発現量をエストロゲン受容体非依存的に低下させることを見出した。イソフラボンの生理作用発現に関わる遺伝子を抗がん作用を指標に探索し、4つの候補遺伝子を特定した。中でもPAP associated domain containing 5(PAPD5)をノックダウンすると、イソフラボンの一種であるエクオールの抗がん作用が消失した。マウスの腫瘍モデルを用いた検討により、エクオールの経口投与によりB16細胞の腫瘍成長が抑制されること、その作用にPAPD5が関与することを明らかにした。エストロゲン受容体以外のイソフラボン類の生理作用発現に関わる遺伝子を世界に先駆けて見出した。 DNAチップを用いた検討によりフラボン類がいくつかの食品成分の感受性に関わる遺伝子の発現量を低下させることを見出し、それらの成分を含む食品との食べ合せが好ましくない可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特定した遺伝子の候補の中からフラボン類およびイソフラボン類ともにその作用に関与する遺伝子を同定することができた。フラボン類に関してはそのがん細胞致死作用における同定した遺伝子の関与について詳細を明らかにできた。エクオールに関してはin vitro、in vivoともにその作用に同定した遺伝子が関わることを明らかにできた。これらの知見は機能性食品成分に関する研究分野の進展に寄与することが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はin vivoにおいてフラボン類の抗がん作用およびUBBの関与について検討する。UBBはRNA干渉法により安定的にノックダウンさせることが困難であったが、これは細胞内におけるUBBの発現量が高いことが原因と考えられる。UBB特異的に染色体を欠損させ、ノックアウト細胞を構築することで解決する。また、PAPD5はその機能に関する報告が少なく、エクオールの作用発現に関わるPAPD5の詳細な機能の解明が課題となる。同定した遺伝子の細胞内局在に及ぼす食品成分の影響および当該遺伝子とフラボノイドとの結合性等を評価し、フラボン類およびイソフラボン類の作用発現における遺伝子の詳細な機能解析を進めていく。また、フラボン類のIgE産生抑制作用やイソフラボン類の高親和性IgE受容体発現低下作用における当該遺伝子の関与について検討する。
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