2011 Fiscal Year Annual Research Report
配列選択的組込みにより安全な長期遺伝子発現を実現するトランスポゾンベクターの開発
Project/Area Number |
11J01309
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 秀之 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 遺伝子治療 / 遺伝子組込み / プラスミドDNA / トランスポゾン |
Research Abstract |
染色体への遺伝子組込みは遺伝子機能解析から細胞治療、遺伝子治療など幅広く応用される。しかしながら、現在の遺伝子組込み技術では、内在遺伝子近傍への組込みにより、細胞の変異を誘発する危険性がある。本研究では、変異の危険性の無い安全な遺伝子組込みの実現を目的とし、配列選択的な遺伝子組込み、及び副作用が生じた場合において組込んだ遺伝子の除去が可能なベクターの開発を試み、以下の研究成果を得た。 1.配列選択的DNA結合蛋白質による配列選択的組込みの可否 まず、配列選択的DNA結合蛋白質を用いて、piggyBacトランスポゾンの組込み位置選択性向上が可能であるかを検討した。その結果、piggyBacトランスポゾンの組込みは配列選択的DNA結合蛋白質により阻害されることが示された。この結果は、配列選択的DNA結合蛋白質によるpiggyBacトランスポゾンの組込み位置選択性向上が困難であることを示す一方、piggyBacトランスポゾンの組込み機構解明や、今後のベクター設計において有用な情報を提供するものでもある。次に、piggyBacトランスポゾンに代わりphiC31インテグラーゼを組込みに用いるベクターを新たに作製した。このベクターでは、配列選択的DNA結合蛋白質により組込みが阻害を受けることはなく、更に、標的配列付近へ組込まれる確率が向上することが示された。 2.組込んだ遺伝子の除去可能性 まず、トランスポゾンの染色体への組込みや、染色体からの再切り出しを担う酵素であるトランスポザーゼの働きを制御可能にするため、低分子化合物Shield1により安定性が変化する不安定化ドメインを融合させたトランスポザーゼの発現ベクターを作製した。次に、この不安定化ドメイン融合トランスポザーゼを用いることで、Shield1によりトランスポゾンの切り出し・組込みを制御可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、piggyBacトランスポゾンと配列選択的DNA結合タンパク質の組み合わせにより、配列選択的組込みを実現する予定であり、そのためにpiggyBacトランスポゾンを有するプラスミドベクター並びに組込み先のモデルとしての標的ベクターを作製していた。この計画は、配列選択的DNA結合タンパク質がpiggyBacトランスポゾンの組込みを阻害することが平成23年度の研究により判明したため予定通りとはいかなかったものの、組込みシステムとしてpiggyBacトランスポゾンの代わりにphiC31インテグラーゼを用いるベクターを速やかに設計・作製し、実験を遂行したため、おおむね予定通りの達成度となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は配列選択的DNA結合タンパク質によりphiC31インテグラーゼの組込み位置選択性を向上可能であることを明らかにしたが、これは標的配列をもつプラスミドDNAへの組込みにより評価したものである。実際の遺伝子治療では、ゲノムDNAへの位置選択的組込みが必要となるため、今後は、標的配列とphiC31インテグラーゼの組込みに必要なattP配列がゲノム上に存在する細胞を作製し、このゲノム上の配列に対する選択的な組込みを評価する。
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