2011 Fiscal Year Annual Research Report
爬虫類における音声シグナルの種間多様性とその生態学的意義
Project/Area Number |
11J01388
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
城野 哲平 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | コミュニケーション / 種間多様性 / 繁殖干渉 / 種認識 / シグナル / 生殖隔離 / 爬虫類 / 交雑 |
Research Abstract |
日本に分布するヤモリ属8種は、分布が重なっているにも関わらず遺伝的交流がない種の組み合わせがある一方で、自然交雑を起こしている種の組み合わせも存在する。本年度は、これまでにとったデータを解析し、日本に分布するヤモリ属において複雑な交雑状況を引き起こしている要因を解明するため、コミュニケーションシグナルが生殖前隔離機構として機能している可能性について検証した。ヤモリ属8種で求愛に用いられるオスの鳴き声構造を比較したところ、4種が種特異的な規則正しいパタンの鳴き声で鳴き、残り4種はパタンに規則性のない鳴き声を発した。鳴き声のパタンの有無を系統関係と比較したところ、鳴き声パタンは系統学的制約よりも、むしろ、生態学的な選択圧を強く受けて進化してきたことが示唆された。鳴き声の構造を種間での自然交雑の有無と比較したところ、交雑しない種の組み合わせ6組中4組では、両種が共にそれぞれ種特異的なパタンの鳴き声を示した。交雑する種の組み合わせ4組では全てにおいて、片方の種が種特異的なパタンの鳴き声をもっていたが、他方の種はパタンのない鳴き声を示した。メスを用いたオスの鳴き声に対する選好性実験を行った結果、種特異的なパタンの鳴き声をもつ種は、それぞれが同種オスの鳴き声を選好した一方、パタンのない鳴き声を示す種はそのような選好性をもたなかった。以上の結果から、鳴き声の種特異的なパタンは種認識シグナルとして機能していることが証明され、鳴き声にパタンがない種は種認識能を失っていることが示された。鳴き声にパタンのない種は同種と他種を区別できないため、交雑が生じていると予測された。先行研究で報告されている他のヤモリ8属12種全ての鳴き声が規則正しいパタンをもった構造であることから、規則正しいパタンの鳴き声がより祖先的な形質であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記した研究計画のうち、本年度に遂行予定だった計画は概ね達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、本研究が更なる発展をみせるためには、国外の同属種の鳴き声とのシグナル構造の比較と、系統関係を明らかにしたうえで、系統種間比較法によってその進化の道筋を明らかにすることが望まれる。そのため、現在、中国やベトナムなど国外の研究者とやりとりを行い、研究遂行の打ち合わせを行っている最中である。
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