Research Abstract |
本年度は,数値計算と実験の両側面からプラズマ・表面相互作用をとらえ,表面反応のデータベース構築および3次元形状進展シミュレーション(ASCeM-3D:Three-Dimensional Atomic-Scale Cellular Model)の高精度化を行った.特に,表面ラフネヌの形成メカニズムについて精力的に研究を進め,様々なプラズマ条件下でのラフネス形成機構の違いについて考察を行った.表面ラフネスの形成には、基板表面に入射するイオンの影響が大きく,入射エネルギー・入射角度が強く関係していることがわかった.その成果は国内外の学術会議にて発表済である. [1]イオン入射エネルギー依存性 ASCeM-3Dの性能評価を行うため,プラズマエッチング実験との比較を行った.実験基板表面の観察・表面ラフネスの定量化には走査型プローブ顕微鏡を用いた.加工速度,ラフネス形状・大きさ,表面粗さの指標(RMS:Root Mean Square),いずれも実験・数値計算で定性的によい一致を示し,計算モデルの有用性が示された. [2]イオン入射角度依存性 基板表面への入射角度は,特に加工形状における底部と側壁での表面現象に置き換えることが可能である.すなわち,加工形状底部においては入射するイオンは表面に対し垂直に入射するのに対して,加工形状側壁において,イオンは表面に対し斜め方向に入射する.ASCeM-3Dによる数値計算によって,入射角度に応じて特徴的な表面構造が形成されることを予測した.イオンが基板に垂直に入射する条件では,基板表面は一様に荒れ,表面ラフネスはなだらかな丘構造を示した.基板に対し斜め入射する条件では,イオンの入射方向とは直交する向きに波状のリップル構造が形成された.さらに高角度で斜め入射する条件では,波状のラフネスの向きが遷移し,入射方向に平行な向きに溝状のラフネスが形成された.同様の現象は,イオンビーム実験でも多数報告されているものの,イオンの入射方向と表面ラフネスの形成メカニズムは,いまだ解明されておらず学術的にも重要な課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,数値計算と実験の両側面からプラズマ・表面相互作用を捉え,表面反応のデータベース構築および,より多くの表面反応を計算モデルに導入し,3次元形状進展シミュレーションの高精度化を行った.特に表面ラフネスの形成メカニズムを中心に研究を進め,様々なプラズマパラメータ(特に,基板へ入射するイオンの角度依存性,エネルギー依存性,プラズマ曝露時間依存性)について考察し,成果を国内外の学会にて発表した.[国際学会3件,国内学会4件,研究会2件]そうした中で,招待講演を3件(国際学会1件,研究会2件)受けるに至るなど,学術的にも一定のインパクトを与えることができたと考えられ,計画通り進展しているものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
数値計算による現象予測に関する研究の進展具合は,プラズマエエッチング実験との比較は満足するに至っていない.残された課題を遂行すべく次年度は, (1)実験の充実,および数値計算結果とのより詳細な比較・検討 (2)取り扱うガス種,材料の拡張による計算モデルの汎用性の向上化 を目指し,研究を進めいていく.また,今後も様々なパラメータでの条件を比較するにあたり,随時,計算機環境の増強を行う予定である.
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