2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J01425
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
関根 良博 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 無機化学 / 金属錯体 / 混合原子価 / 外場応答性 / 磁性 / 光物性 / 電子移動 / 水素結合 |
Research Abstract |
シアン化物イオン架橋金属多核錯体は、金属イオン間の磁気的・電子的相互作用により、様々な興味深い物性を示す。これまで、適切な金属イオン・有機配位子を用いることで得られる環状鉄-コバルト環状四核錯体が、温度や光照射に伴い電子状態変化を示すことを明らかとした。この電子状態変化は、低温でのLSCo(III)イオンとLSFe(II)イオンとの組み合わせからなるLS状態と、高温でのHSCo(II)イオンとLSFe(II)イオンからなるHS状態との変化に起因する。また、溶液中における四核錯体の末端CN基が弱塩基性を示すことから、プロトン応答に伴う電子状態変換を見出してきた。当該年度では、新たに水素結合様式の異なる有機プロトンドナー分子を鉄-コバルト環状四核錯体と共結晶化させることで、四核錯体が水素結合により連結された構造体を構築可能であることが分かった。集積体は、熱・光により電子状態変換が可能なことを明らかとした。さらに、四核錯体分子の外場応答性について検討を行った。その結果、赤色光を照射することで高効率に得られた準安定HS状態に、緑色光を照射すると大部分が基底のLS状態へと変換され、異なる波長の光照射により電子状態を可逆に変換可能なことが分かった。赤色光は、LS状態の原子価間電荷移動遷移に、緑色光はHS状態の原子価間電荷移動遷移にそれぞれ対応する。さらに、硬X線を用いた分子内電子移動の発現に成功した。低温において、LS状態の試料にCoK吸収端に対応するX線を照射すると、電子状態及び構造がLS状態から準安定HS状態へ変化することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロトンドナー分子により連結された一次元・二次元集積体について、外場応答性について検討した。その結果、温度変化に伴い、可逆に電子状態変換が可能な化合物の合成に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
水素結合様式の異なる各種集積型化合物を対象として、電場印加による電子状態変化及び誘電性変化について検討する。
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