2012 Fiscal Year Annual Research Report
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11J01446
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
當真 賢二 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | ガンマ線バースト / 相対論的ジェット / 偏光 / 活動銀河核 |
Research Abstract |
ガンマ線バースト(GRB)とは、数十億光年の距離から数分以下の短時間、強烈なガンマ線が観測される天体現象である。その起源は不明な点が多く、活発な研究が行なわれている。本研究の目的は、これまでの私のGRB放射の理論的研究で用いた手法や得られたアイデアを拡張し、信頼のおけるバースト放射モデルを構築することである。それによってバーストを生成する相対論的ジェットの駆動機構を解明する。今年度は、全計画の中の長期的計画「偏光情報を用いたGRBと活動銀河核(AGN)ジェットの駆動機構の統一的解明」を引き続いて実行した。前年度に、高原教授(受入研究者)との議論からAGNジェット中の質量の起源について新しいアイデアを得たが、それを論文にまとめ、受理された。この成果についての発表がAGNの国際研究会で口頭講演に選ばれた。この研究を端緒に、ジェットの駆動機構の主流である磁気流体ジェットモデルの議論を高原教授と始めた。ほどなくジェットを効率よく加速させるための条件について新しい解析方法が見つかり、それを論文にまとめ、投稿した。一方で、GRB放射の偏光についても前年度に引き続いて、大きな成果を得た。金沢大の観測チームが検出した新たな2つのGRBのガンマ線偏光を用いて、バースト放射機構はシンクロトロン放射が有力であるという結論を得た。またプランクスケールにおけるCPT対称性の破れについて、これまでで最も厳しい制限を得た。これらの成果は2つの論文として、受理された。後者については、大阪大学・IPMU・金沢大学からプレスリリースを行なった。前年度から進めてきたGRB偏光に関する研究は、ドイツ・ミュンヘンで開かれた国際会議で高評価されたように(http://www.mpe.mpg.de/events/GRB2012/?pg=Press)、最近の世界のGRB研究の中で最も重要なものの一つとなったといえる。さらに広島大のカナタ望遠鏡で得られたGRB残光の偏光データを理論解釈し、残光を生む磁場の起源について、これまでの標準シナリオを棄却する結論を導いた。この成果も論文として受理された。総合して、GRBの放射機構と相対論的ジェットの駆動機構について、計画以上の成果が得られたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した短期・中期・長期の3つの計画のうち、短期的計画は前年度で実行できた。今年度は長期的計画に集中し、5編の論文を受理させ、1編の論文を新たに投稿した。計画段階では予想しなかった偏光の観測結果を使って、世界的に評価される成果を出した。また高原教授とジェットの駆動機構に迫る新しい解析方法を生み出すことができた。これらはいずれも当初の計画以上の進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
高偏光が検出されたGRBについてはシンクロトロン放射機構が有力である。一方で、フェルミ衛星が検出したGRBには、準熱的放射機構が有力なものがある。前年度に論文化した自らの放射モデルは、いずれの放射機構も含んでおり、ジェットの物理状態によって卓越する放射が異なることになる。状態の違いは可視光の振る舞いにも現れると予想される。その点を明確にすることが次の課題である。ジェットの駆動機構については、いままで本研究で議論してきたものとは別に、ブラックホールのエネルギーで駆動するモデルも活発に議論されている。そのモデルについて新しい解析方法を見出したので、それを推進していく。最終的には、本研究の目的である「GRBジェットとAGNジェットの起源の統一的解明」に結論を出すことを目指す。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Magnetic Structures in Gamma-Ray Burst Jets Probed by Gamma-Ray Polarization2012
Author(s)
Yonetoku, D., Murakami, T., Gunji, S., Mihara, T, Toma, K., ほか
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Journal Title
Astrophysical Journal Letters
Volume: 758
Pages: 1-5
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Prospects for Detecting Gamma-Ray Bursts at Very High Energies with the Cherenkov Telescope Array2012
Author(s)
Kakuwa, J., Murase, K., Toma, K., Inoue, S., Yamazaki, R., Ioka, K.
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Journal Title
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
Volume: 425
Pages: 514-526
DOI
Peer Reviewed
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