2011 Fiscal Year Annual Research Report
発光性分子内協同試薬によるイオン液体抽出系の開発と有害金属応答型センサへの応用
Project/Area Number |
11J01577
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岡村 浩之 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イオン液体 / 溶媒抽出 / カドミウム / ユウロピウム / 大環状配位子 / β-ジケトン / 溶媒和 / 時間分解レーザー励起蛍光分光法 |
Research Abstract |
イオン液体(IL)は,室温でも液体状態の塩であり,イオンの組合せによって溶媒特性を調節することが可能な機能性溶媒である。ILを溶媒抽出法における抽出媒体として用いた場合,その特殊な溶媒特性から,従来の有機溶媒とは大きく異なる抽出挙動を示すことが考えられる。本研究では,ILを用いた金属イオンの高効率抽出系を構築し,有害金属イオンを発光により検出可能な抽出クロミックセンサを開発することを目的としている。本年度は,ILとして1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド([C_4mim][Tf_2N])を用いて,発光性大環状配位子によるカドミウム(II)および2-テノイルトリフルオロアセトン(Htta)によるユウロピウム(III)の抽出について研究した。 1)カドミウム(II)の抽出試薬として,発光性を示す大環状配位子5-クロロ-8-キノリノール結合ジアザ-18-クラウン-6(H_2CIQDAI8C6)を合成した。H_2CIQDA18C6は,pH9.5以下では,[C_4mim][Tf_2N]相に定量的に分配し,ILへの親和性が高いことを明らかにした。H_2CIQDA18C6によるカドミウム(II)の抽出において[C_4mim][Tf_2N]を用いると,クロロホルムを用いた場合と比較して,試薬の抽出能が劇的に向上することを見出した。 2)抽出試薬としてHttaを用い,ユウロピウム(III)の[C_4mim][Tf_2N]への抽出化学種について調べた。[C_4mim][Tf_2N]系の抽出性は,含酸素有機溶媒系よりも高く,時間分解レーザー励起蛍光分光法および赤外吸収分光法を用いた研究から,[C_4mim][Tf_2N]中では,中性Eu(tta)_3キレートは完全に脱水和されていることを明らかにした。この原因として,Eu(tta)_3へのIL成分Tf_2Nによる溶媒和が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究内容は,本年度中にほぼ達成することができ,期待通りの結果が得られた。本年度は,これに加えて,イオン液体抽出系の基礎となる,金属イオンの抽出におけるイオン液体の溶媒効果と溶媒和に関する分光学的研究を行い,研究成果を論文として学術雑誌に掲載できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に検討したイオン液体抽出系を単なる抽出分離に応用するだけでなく,イオン液体に抽出された金属錯体の立体構造と光学特性の関係を明らかにする。さらに,カドミウム(II)などの有害金属イオンを発光色で検出可能な抽出クロミックセンサを開発し,アルミニウム(III)やカルシウム(II)などの共存イオンが混ざった模擬水溶液からのカドミウム(II)の発光センシングを行う。最終的には,河川水や工場排水などの実サンプルのin situ分析を目指す。
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