2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J01758
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 克明 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ニトロキシドラジカル / 磁性液晶 / 磁気液晶効果 / 磁気電気効果 / 磁性ヒドロゲル / 磁性ソフトソフトマテリアル |
Research Abstract |
申請者は、強誘電性と磁気的相互作用を示す有機ニトロキシドラジカル液晶が、これまでにNakamuraらによって無機材料で報告された磁気電気効果(電場の印加による自発磁化の誘起、あるいは磁場の印加による自発分極の方向の反転)を発現する可能性があると考え、EPRスペクトル法を用いて、磁化率の電場依存性を測定した。その結果、電場による分子配向に伴い、磁化率がヒステリシス曲線を描くことを明らかにした。この磁気電気効果のメカニズムを解明するため、研究計画に従い、分子科学研究所にてパルスEPR法によるスピン緩和時間の電場依存性測定を試みた。しかしながら、有機ラジカル液晶中におけるスピン緩和時間が早すぎるため、パルスEPR法が磁気電気効果のメカニズム解明に適さないことが分かった。そこで、EPRスペクトルの線幅の電場依存性から、分子間磁気相互作用の電場印加による変化を見積もった。その結果、観察された磁化率の変化は、分子配向の変化により、分子間スピン-スピン双極子相互作用が変化したことに由来することを明らかにした。以上の結果は、有機ニトロキシドラジカルの磁化率が電場によって変化したことを示した世界最初の例であり、そのメカニズムの解明により、有機ラジカル化合物の研究に与えるインパクトは大きいと考えられる。 また、24年度の研究計画に記載した両親媒性有機ニトロキシドラジカル化合物の研究にも着手した。当初、両親媒性部位として、ナノチューブ会合体を形成しやすいグリシルグリシンを導入したが、会合体の形成が確認されなかった。しかしながら、両親媒性部位としてアラニンを導入した化合物がヒドロゲル化剤となることを明らかにした。以上の結果は、有機ニトロキシドラジカル化合物のソフトマテリアルへの展開の端緒になると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度に計画していた1)磁気電気効果の解明と2)強誘電性ニトロキシドビラジカル液晶の合成について、1)については概ね達成することができた。また2)に関しては強誘電性ではないものの、そのビラジカル液晶性化合物の合成に成功し、今後、強誘電性ビラジカル液晶合成に向けた基礎的な知見を得ることができたと考えられる。さらに24年度に計画していた実験の一部もすすめることができたため、研究の目的は、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策は1)強誘電性ニトロキシドビラジカル液晶性化合物の合成と2)ナノチューブ会合体を形成する有機ニトロキシド化合物の合成に分けられる。1)については、ビラジカル化合物電気双極子モーメントの向きを制御することにより強誘電性液晶相の発現が可能であると考え、合成を進めている。また、2)については両親媒性部位として、ブドウ糖部位を持つ化合物の合成を検討している。
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