2011 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡における変形を伴った自発運動 : 細胞運動とそのモデル系
Project/Area Number |
11J01819
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永井 健 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | アクティブマター / 集団運動 / マランゴニ効果 |
Research Abstract |
研究目標の達成のため、本年度は主に下記のような実験系及びモデルの構築を行った。 ・光によって駆動される液滴の開発 表面張力に駆動される液滴運動を実験的・系統的に調べるためには、操作性の高い実験系が必要となる。そこで光を用いて動く液滴の実験系を現在構築中である。この系では実験のオン・オフが光により行うことが可能となり、エネルギー注入の強さを光の強さによって調整できるため、コントローラブルな実験系を作ることができる。 これまでに私の研究により、液滴に一様に光を照射して温めると、移流と拡散の非線形カップリングにより臨界強度よりも強い光照射のもとで液滴が動くことが理論的に示されている。そこで赤に染色した水滴を油上に置き上部から緑色の光を照射する光学系を組み立てた。予備実験により照射光の強度が十分強い時液滴は直進性の高い運動を示すことがわかった。 ・エネルギー変分による現象論的な液滴運動のモデル構築 運動する細胞や私の研究する液滴の運動などソフトマターで構成されたアクティブマターは一般に運動中に変形し、そしてその変形と運動は密接に関連付いている。そこで我々は現象論的に表面張力によって駆動される液滴に対してラグランジアンを定義し、その変分から液滴の運動方程式を導出した。このように導出されたモデル方程式を用いると多粒子の運動のシミュレーションを行なっても自然に個々の粒子の体積を保存することができる。ただしこのモデルをシミュレーションするには特殊な数値計算法が必要となるため、金沢大学長山教授、小俣教授らと共同で研究を行った。この数理モデルを用いて液滴の分裂・融合・衝突を再現し、実験との対応があることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記した実験系の構築は順調に進み、予備的であるものの運動を取り出すことに成功している。また、液滴運動のモデル構築も成功し、計画書通りに進んでいる。さらに得られた結果を下に集団運動についてのモデルづくりにも成功し、研究結果がNature誌に掲載された。以上の理由により、23年度の研究は計画以上に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の方針としては基本的には研究計画の通りに行う予定である。まず光に駆動される液滴実験系を洗練させ、液滴運動中の変形と運動の関連性について詳細に調べる。特に液滴の大きさを正確に調整する方法の開発を行う。研究計画には記されてないが、この実験系を用いて変形する液滴が起こす集団運動についても研究する予定である。また、次の計画である細胞運動における変形の重要性を調べる研究のため、Keratocyteを用いた実験系の開発に取り掛かる。現在佐野研究室ではKeratocyteの培養環境は整っているため、それを用いた実験環境の構築を行い、その観察を24年度中に行う予定である。
|
Research Products
(6 results)