2012 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡系における変形を伴った自発運動:細胞運動とそのモデル系
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11J01819
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永井 健 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | アクティブマター / 集団運動 |
Research Abstract |
鳥や魚などの生物集団で規則だった群れ運動が知られている。近年実験技術の発達や理論的な現象解析が進んできたため、このような自走粒子の集団運動の研究が盛んに行われている。特に、自走粒子の集団中の群れに転じる相転移現象が数理モデルにより発見され、集団運動の中に普遍的な性質があると期待され、基礎物理学的観点から大きな注目を集めている。ここで細胞など柔らかい自走粒子を考えた時、その形状は運動とともに変形する。自走粒子の運動において、変形は重要な変数となり得ることが指摘されており、細胞などの運動において変形と運動に大きな相関があることが実験的に確かめられている。そこで平成24年度は当初の研究計画を元に、変形しながら運動するモデル実験系の構築を行った。将来的には構築した系を用い、変形する自走粒子の集団運動に潜む普遍則の探求を行う。 モデル実験系の構築の第一歩としてソフトマターで形作られた容易に制御できる自走粒子を作製している。制御を容易にするためにエネルギー源として赤外線を用いる。光をエネルギー源とするとエネルギーの注入量を用意に制御できるため、広いパラメータで実験可能となり、転移現象など普遍的な側面の探索が容易となる。粒子としては赤外線を吸収するマイクロゲルを用いる。24年度中にマイクロ流路を用いて粒子の大量生成に成功した。23年度中に液滴を用いてほぼ同様の系で液滴運動が起こることを確認しており、25年度中に上記のマイクロゲルを用いて自走粒子系の構築する予定である。23年度中に用いた液滴系だと同じ大きさの液滴を作ることは困難であるが、ゲルだと同じ大きさのゲルを作れ、再現性が高い実験系となる。変形に対する運動の依存性を調べるために、任意のゲル形状を作る技術の構築も行った。この技術はほぼ完成しており、作成したゲルの自走を試みている。また、将来の集団運動に関する実験を見越して、変形などの遅い変数を持った自走粒子の集団運動に対する数理モデルを構築し、その群れ運動への転移挙動を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画では単一の変形する自走粒子に関する研究を行う予定であったが、現在そのような粒子に対するモデル実験系、数理モデルだけでなく、集団運動に関するモデルの構築・解析を行なっている。上にも述べたように近年自走粒子の集団運動に対する注目が基礎研究、応用研究ともに高まっている。本研究は研究計画に述べた研究目標の達成だけではなく、更に一歩先の研究につながり、またそれは大きなインパクトがあるものになると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、まず24年度に作成したゲルの自走の実現を目指す。そこから、エネルギー注入と運動速度・運動ゆらぎの関係、粒子形状と運動の関係を明らかにする。また、ゲルの硬さを調整し、運動によって変形が起こるように系を改良する。これらの研究と並行して、他粒子になった時の集団運動について研究を行う。そのために2粒子間の相互作用を明らかにし、数理モデルを併用しながら、集団運動の転移挙動を調べる。そこからソフトマターで構成された自走粒子の運動に潜む普遍則の探求を行う。
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