2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J01929
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福岡 脩平 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | キラル磁性体 / 金属錯体 / 有機導体 / πd系 / 磁気転移 / 熱測定 |
Research Abstract |
本研究は磁場制御下での単結晶による熱測定によってキラル磁性体及び、有機磁性超伝導体の示す現象を解明することを目指している。 キラル磁性体では、磁気転移温度より高温域での熱容量測定を行った。その結果、本物質の磁気エントロピーのほとんどが転移温度より高温域に分布しており、転移に寄与する磁気エントロピーは全体の10%程度であることが明らかとなった。また高温の熱容量の磁場依存性の検証から、本物質が結晶構造を反映した二次元性の強い磁気構造を形成しており、面内の相互作用が強磁性的であることを示唆する結果が得られた。初年度で観測した一次転移は磁気転移が磁場によって抑制され消失する境界で生じており、一次転移を境にして磁気エントロピーの分布が高温域に変化していることが示唆される。そのため、今回の高温域の磁気熱容量の磁場による変化や磁気構造の低次元性といった情報は本物質の示す現象を理解するうえで重要な情報となる。 有機磁性超伝導体については、_Κ-(BETS)_2FeBr_4塩、及びλ-(BETS)_2FeCl_4塩の面内磁場下熱測定を行い、_Κ-(BETS)_2FeBr_4塩において磁場をa軸方向に印加することで、_Κ-(BETS)_2FeCl_4塩で見られていたようなhump構造が現れることを見出した。また、解析によってこのhump構造の現れる温度域及び磁場依存性がd電子間の相互作用の大きさでスケール出来ることが分かった。この結果は、両塩で見られるhump構造が同じ原理で発現していることを示唆する結果である。また、λ-(BETS)_2FeCl_4塩の磁場依存性の検証から、_Κ塩で見られたhump構造の振る舞いと、これまで報告されているλ塩の熱容量の特徴的な振る舞いとの関連性を示唆する結果も得られている。以上の結果は、これまでに明確な理解がされていないπd系の磁気的性質の解明を目指すうえで重要な結果であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
キラル磁性体については、計画通り高温域での測定を行い、磁気エントロピーの温度に対する分布、転移への寄与などについて議論できた。また、有機磁性超伝導体については、当初の計画通り、κ-(BETS)_2FeCl_4塩、κ-(BETS)_2FeBr_4塩の比較を行い、κ塩におけるd電子間の相互作用の大きさと低温での振る舞いとの関係を検証できたことに加え、λ型塩での測定から、λ塩とK塩の間の関連性を示唆する結果を得ることができ、πd系の示す磁気的性質について深く議論することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
キラル磁性体については、これまでに熱容量測定によって一次転移の現れる条件、磁気エントロピーの寄与などを議論してきた。来年度では熱容量の情報に加えて、磁化率等の測定を行うことで磁気構造、一次転移の起源を議論していく予定である。また、並行して交流磁場印加装置の開発を行い、動的外場下での熱容量測定の実現を目指していく。 有機磁性超伝導体については、本年度の結果から熱容量に見られるhump構造がπd系物質であるBETS塩に共通の振る舞いであることが示唆された。来年度ではλ塩の強磁場域での測定を含めた磁気転移、hump構造の磁場依存性をより詳細に検証し、λ塩とK塩の関係、πd相互作用の大きさとの関係を議論しその起源に迫る。その結果をもとに、λ塩でのπ電子系の絶縁化といったd電子系のπ電子系の性質に及ぼす影響などの議論を進める。また、これまでに磁気的性質の検証と並行して磁場誘起超伝導相の検証を目指した装置開発、改良を行ってきており、来年度では装置を完成させ、温度計の磁場中較正等の装置整備を行った後に磁場誘起超伝導相の検証を行う予定である。
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Research Products
(6 results)