2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J01929
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福岡 脩平 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機導体 / π-d系 / 超伝導 / 熱測定 |
Research Abstract |
本研究は主に熱測定を用いて、キラル磁性体、および有機磁性超伝導体の示す物性現象の発見およびその発現機構の解明を目的としている。研究の最終年度である今年度は特に有機磁性超伝導体κ-BETS_2FeBr_4塩の磁気秩序と共存した超伝導状態を熱的観点から検証すること、これまでのBETS塩の研究で見出した磁気転移温度以下で現れる熱容量のhump構造について詳細に調べることに重点をおいた。これらの結果を包括的に議論し、π-d系ならではの特徴を明らかにすることを目指した。 磁気秩序と共存した超伝導状態の検証のため、磁場印加方向を数°単位で厳密に制御できる熱量計を開発し、それを用いてκ-BETS_2FeBr_4の熱測定を行った。その結果、超伝導転移に由来する熱異常を検出することに初めて成功し、超伝導と磁気秩序がバルクとして共存していることを示した。また、伝導面内磁場印加下での超伝導転移の振る舞いについて検証を行い、超伝導転移温度が面内磁場に対して強い異方性を示すことを明らかとした。解析の結果、この超伝導転移の異方性はd電子系の磁気秩序の異方性と対応しており、d電子系の磁場印加による磁気状態の変化がπ電子系の超伝導状態に敏感に影響を与えていることを示した。この結果はπ-d相互作用の効果がπ電子系が金属、超伝導状態であっても強く現れることを示した重要な結果である。また、前年度までに我々は, κ-BETS_2FeCl_4塩、κ-BETS_2FeBr_4塩が磁気転移温度以下で磁気熱容量にhump構造を示すことを見出した。本年度はκ塩と同種のhump構造を示すことがすでに報告されているλ-BETS_2FeCl_4塩の磁場下での詳細な熱測定を行い、K型塩の結果との比較、議論を行った。その結果、K型、λ型両塩の熱容量の振る舞い、相挙動には共通性があることを見出した。この結果は強いπ-d相互作用を有するBETS塩の物性を包括的に理解できる可能性を示した重要な結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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Research Products
(6 results)