2011 Fiscal Year Annual Research Report
原始惑星系円盤形成期における物質進化の理論的研究 : 星間物質から惑星系物質へ
Project/Area Number |
11J02024
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
古家 健次 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 原始惑星系円盤 / 星間化学 / 星形成 / 惑星系形成 |
Research Abstract |
分子雲コアの自己重力収縮により、原始星と星周円盤が形成される。このような構造形成過程は同時に、分子雲コアで観測される星間物質から太陽系を構成する惑星系物質への物質進化の過程でもある。この2つを結びつけることは、星・惑星系形成過程の理解に不可欠であると同時に、地球や生命の起源への理解にもつながる。 本年度は分子雲コアから、ファーストコアまでの分子組成進化を調べた。ファーストコアは原始星形成前に形成される.と理論的に予想されている断熱的な天体である。寿命が1000年程度と短いこともあり、未だ観測的に実証されておらず、今後の観測的研究の進展が望まれている。ファーストコアの分子組成を明らかにすることは、分子輝線観測にどのラインを用いればよいか、という点から重要である。また、ファーストコアは原始星形成後、星周円盤へと直接進化することが、近年の数値計算から明らかになってきたため、星周円盤の初期組成にも制約を与えうる。 主要な結果は以下のとおりである。 1)ファーストコア外層(T<500K)のガス組成は、分子雲コア時代に作られた氷の昇華によって主に決まることを明らかにした。また、ファーストコア内層では、重元素は単純な構造のガス分子(一酸化炭素、水、窒素分子など)として主に存在することを示した。 2)これまで原始星コアを特徴づけると考えられてきた大型有機分子(メタノール、ギ酸メチルなど)が、ファーストコア時代にすでに中心コア周辺のコンパクトな領域(10AU程度)でガス中に存在していることを示した。これは大型有機分子の観測からファーストコアを同定できる可能性を示唆しており、観測的にも重要である。 以上の結果を論文にまとめ現在、The Astrophysical Journalに投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的を達成するには、輻射流体計算と分子組成計算の2つを行う必要がある。どちらも当初の予想以上に計算コストが高く、分子雲コアからファーストコアに至るまでを1パラメータ計算するのに、実時間で2か月以上要した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、輻射流体を専門とする共同研究者と連携して、分子雲コアから原始惑星系円盤形成期に至るまでの物質進化の一貫したモデルを構築することを目指す。原始星形成後は輻射流体シミュレーションの時間ステップが極端に短くなる。そのため、円盤形成期の計算を進めていくには、シンク粒子法の導入が必要である。 一方、円盤形成後において、質量輸送が円盤の化学構造に与える影響を調べることも重要であり、今後はこれについても並行して研究を進めていく。
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Research Products
(7 results)