2011 Fiscal Year Annual Research Report
Dirac-Klein-Gordon方程式系の解の漸近解析
Project/Area Number |
11J02083
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池田 正弘 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 非線形偏微分方程式 / 分散・波動 / 散乱理論 / 解の爆発 / シュレディンガー方程式 / クライン・ゴルドン方程式 / ディラック方程式 / 長距離散乱 |
Research Abstract |
今年度の私の研究テーマは「空間2次元におけるディラック・クライン・ゴルドン方程式系(DKG)の散乱理論の構築」と「非線形シュレディンガー方程式(NLS)の小さな初期値に対する解の爆発」についてです.DKGに対しては,空間3次元において,2011年に林氏とNaumkin氏との共同研究で既に散乱作用素が低階のソボレフ空間の上で得られるいました。しかし空間次元が低くなればなるほど解の時間減衰が悪くなり,非線形項の制御が困難になり問題が難しくなるので空間2次元に対しては未解決問題でした。そこで,今回ディラック場とクライン・ゴルドン場の質量がある非共鳴条件を満たす場合に,ディラック方程式の非線形項の構造を調べることにより,波動作用素の存在を比較的低階のソボレフ空間の上で示すことが出来ました.この結果は現在国際誌に投稿中です.また,砂川氏,下村氏との共同研究で先の波動作用素の存在を示したときと同様のアイデアを用いて逆波動作用素の存在を証明することにも成功しました。この結果は最近国内誌に採録が決定した内容です.しかし,定義域と値域にまだ不自然さの残るもので,散乱作用素の存在は未解決問題となっております. 次に,私は若杉氏と共に絶対値p乗の非線形項を持つシュレティンガー方程式の小さな初期値に対する解の爆発について研究しました。この方程式に対して局所可解性は1987年の堤氏の論文からすぐに従うものです。しかし大域解の存在・非存在は長い間未解決でした,今回我々は非線形熱方程式や非線形消散型波動方程式で近年良く用いられているテスト関数の方法を用いてpがある範囲に存在する場合,そのNLSに対して大域解の非存在と局所解の最大存在時刻で解の2乗積分が発散しているということを示しました。この結果は現在国際誌に投稿中です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に入れていた空間2次元におけるディラック-クライン・ゴルドン方程式系に対して最終値問題を非質量共鳴条件下において解決することが出来た。クライン・ゴルドン場の質量が0の場合についても当初の予定で,これは未解決だが,その代わりに非線形シュレディンガー方程式に対して長い間未解決であった問題に対して結果を得ることができた.以上の2点から考えておおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はディラック-クライン・ゴルドン方程式系に対して当初の課題であった空間3次元においてクライン・ゴルドン場の質量がない場合の解の漸近挙動について研究を遂行していく予定です。この場合,質量がある場合より解の時間減衰が悪くなり,その上,クライン・ゴルドン方程式の解とディラック方程式の解の属する適当な関数空間に違いが生じることから問題はより難しくなることが知られています。クライン・ゴルドン方程式の解の微分の最適な減衰評価が必要であると思われ,また微分のないクライン・ゴルドンの解の2乗とディラック方程式の解の積である3次の項の処理も必要になる.この2点の困難さを乗り越える解決案を考案することが問題解決の鍵となります.
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